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2010年9月 Archive

パフォーマンス再考  100927

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年9月27日 14:48

パフォーマンス再考

20090428でEMSとの両立生について見解を述べました。両者の用語の定義を比較するとQMSとEMSの統合は簡単ではない、という趣旨です。その中で、パフォーマンスについて「成果、結果だけでなく、その過程も重要であると考えるQMS」「測定可能な結果にこだわるEMS」と表現しました。

この考え(田中の認識)は今も変わっていません。7月に50001規格(エネルギーマネジメントシステム)の話を聞いて、その感を深くしました。50001は14001を土台にして、環境問題からエネルギーを主役に担ぎ出したイメージがあるのですが、エネルギーパフォーマンス指標という概念があります。エネルギーパフォーマンスの定義は、「エネルギーの使用とエネルギー消費にかかわる測定可能な結果"measurable results"」です。「測定可能」は"measurable"を訳したものですが、同じ"measurable"を9001規格5.4.1項では「判定可能」と訳し、必ずしも定量的である必要はないと(日本国内では)考えています。
9001規格のベースである9000規格はパフォーマンスという用語を定義していませんが、JIS規格では製品を対象としたときには「性能」と訳し、それ以外の場合は「成果を含む実施状況」または単に「実施状況」と訳しています。「製品」はなんらかのプロセスを実行した結果ですから、対象がモノとしての製品の場合には「実施状況」はありえません。「製品」以外の場合はパフォーマンスを「実施状況」だけと考えるか「実施状況+成果」を考えるか、いずれにしても実施状況を無視できないのがQMSの立場です。

"performance"を英和辞典で調べてみましょう。当然、辞典の発行元で違うことが書いてありますが、①演技、公演、②実行、遂行、③できばえ、成績、④性能とあります。①②は実施過程を、③④は結果を示していることは明白です。辞書では、いろいろな分野の英文中で登場する(使用されている)頻度の多い順に訳語を並べていると考えられます。
14001規格、50001規格の定義は尊重しなければいけませんが、一般的にはパフォーマンスは実施過程に使用されることが多いと考えます。何もしないで狙った結果に到達はできませんから、どのような活動を実施することでそのレベル、結果、アウトプットを実現するのかという計画なりプログラムが重要になってきます。

14001規格、50001規格では、方針⇒目的(方針と整合)⇒目標(目的と整合)⇒計画(目的・目標の達成が主眼)とブレークダウンすることで、結果の達成には実施過程が重要であることを暗示しているように思います。9001規格は、必要なプロセスを明確にする⇒プロセスの実施順序を明確にする⇒各プロセスの中身を確定する⇒重要なプロセスを監視測定することでアウトプットが正しい結果となることを保証するという形で実施過程の重要性を強調しているように思います。

パフォーマンスという概念のとらえかたが、まるっきり違っているわけではありませんが、現状では間違いなく温度差があります。

猫型人間  100915

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年9月15日 12:50

猫型人間

猫型人間をご存じですか。
最近増殖中だと警告する本を書いた方もいます。犬と比較しての話ですが、あまり人(上司)や組織全体になじまず、勝手な行動をする。いつでもそうかというと気まぐれで、やる時はやるぞ的な管理職泣かせの人を指しているようです。田中もこのタイプです。

田中は、少し違う観点で犬/猫の違いを観察しています。どういう場面かといいますと、排泄行為です。犬は電信柱をみるとやたらとにおいつけをしていますが猫はそのようなことはしません。すべての犬があのはしたない行為をするのか知りませんが、猫がやっているのを見たことはありません。猫は排便後、上から土をかぶせるしぐさをします。においをむしろ隠そうとするのです。
猫がはしたなさを心得ているわけではないでしょうから、ああいう形で自分の存在を誇示する気持ちがないのだろうと思います(推測です。そのかわり、1日に最低1回は自分の縄張りを巡回チェックしているそうです)。死ぬ時も猫は飼い主から離れるのに、犬は飼い主のもとで死ぬとか。

人間にも犬型/猫型があります。それ以外の型がないわけではないのですが、ここでは類型化してしまいます。
犬型人間:強烈に自己主張します。手柄は自分が活躍した結果だと、下手をすると別の人の分を横取りします。会議ではよく発言しますし、声(物理的な声量)も大きいです。狙い通りの結果でなかった場合には他人に責任をなすりつけます。政治家に多いような気がします。
猫型人間:私なんか大して役立っていませんよ、という態度をとります。組織活動の中でそれなりの働きをしていますが、全体がうまくいったらそれでいいじゃないか、誰が頑張ったからとか、あいつがいたからとか厳密に査定しなくてもいい、と考えます。

田中は猫型です。しかし、宴会(最近ありませんが)では犬型です。たまにはそういうこともいいでしょう??
このような人間が多い組織でマネジメントする方は大変だとお察し申し上げます。でも、決められたことを堂々と破るようなことはしませんし、破ったとしても全体に影響したり、不適合になるレベルではありませんから、無害ともいえます。オチのない話になってしまいましたが、忠犬ハチの話は有名ですが、忠猫タマの話は聞いたことがありませんネ。駅長として役立っているネコの話は聞きますが。

天地明察  100903

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年9月 3日 13:30

天地明察(渋川春海/安井算哲)

昨年の本屋大賞に選ばれた小説で、渋川春海、安井(保井)算哲という複数の名前をもっていた人物が主人公です。

この小説が現在、科学博物館のボランティア仲間で人気です。田中は貸していただいて読みましたし、図書館に貸し出しの予約をしている方もいます。渋川春海が製作した天球儀や地球儀、息子の名前で作成した「天文成象図(星図)」が館内に展示してあるからです。渋川という名前は天文学者(長期にわたって天体観測をし、正確な暦を作成する)という立場、安井(または保井)算哲という名前は碁方(将軍の前で本因坊家と囲碁を戦ったり、江戸城内で要職者に囲碁の指導をする)という立場で使い分けていたそうです。神道の知識ももち、コペルニクス同様マルチタレント人間だったようです。

小説は四代将軍家綱から五代綱吉にかかる時代に、渋川春海(1639年生―1715年没)が、和算で有名な関孝和にヒントをもらいながら、貞享暦という、当時としては最良の暦を完成させていく過程を描いているのですが、田中は、主役だけでなく、大老の酒井雅楽頭(うたのかみ)忠清や高遠/会津藩主の保科正之などに興味を持ちました。

当時、政治の実権は幕府が握っていたわけですが、形式上朝廷をたてまつるという微妙なバランスの中で、暦の決定権は朝廷側(土御門家)にあったようです。そういう時代背景の中、酒井忠清や保科正之は着々と準備をし、渋川春海という有能な人物を重用し、改暦事業を進めたのです。徳川光圀も登場します。

9001規格の5.3項(品質方針)には「組織の目的に対して適切」という言葉があります。また、規格序文には「組織内において、望まれる成果を生み出すために」という言葉があります。この「望まれる成果を生み出すために」は2008年版で追加された重要なフレーズなのです。自分たちの組織は本来どのような目的でスタートしたのか、現時点では何が目的なのか、どういう事業で社会に貢献するのか、利害関係者(複数)は自分たちにどのような成果を望んでいるのか、何をすべきで何をしてはいけないのか・・・・を考えることがQMSの原点だと述べているのです。

酒井忠清や保科正之の時代にマネジメントという概念などはなかったでしょうが、小説を読み進む中で、彼らは見事に9001の精神を持っていたように田中は感じました。
幕府としては、国全体を安定させ、武士・町民・農民の不満が爆発しない状況を維持することが最重要の課題であったでしょう。暦通りに日蝕や月蝕が起きれば、さすがお上はすごいと信頼されるのですが、暦通りの現象が起きなければ信頼感は薄くなります。当時は渤海国経由で中国(唐)からもたらされた宣明暦を使っていたのですが、800年経つ間に少しずつのズレが2日分になっていたそうです。
朝廷側には正しい暦を作成するのに必要な天体観測技術・実績がなく、中国の暦を追認するだけでした。まず正しい暦の製作に不可欠なデータ収集が必要でした。何年にもわたる準備が必要で、自身が権限を持っている間に完成しないかもしれないが、幕府としてはなんとしてでも完遂しなければいけない事業として推し進めていく様子は、まさにマネジメントそのものだと感じました。

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