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2010年6月 Archive

自己適合宣言の適合性評価  100625

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年6月25日 12:10

自己適合宣言の適合性評価

自己適合宣言の考え方が浸透し、実施している組織が増えている、という記事が「アイソス」という雑誌に載っていました(2010年5月号)。自己適合宣言については090624で話題にしましたが、主として9004規格と関連づけたものでした。

考え方が浸透してきたのはいい傾向だと思います。
自己宣言は、ただ勝手に宣言すればよいのではなく、なんらかの手法で適合性評価を行って実証します。さらに、宣言した内容に関して責任を明確にすることが義務づけられています。当然のことです。
適合性評価は第一者監査(内部監査)、第二者監査(利害関係を伴う外部組織≒顧客による監査)、第三者審査(認証機関による審査)のいずれかで行います。第三者審査になるとISO認証審査と限りなく重なり合うので利用する可能性は少ないように思いますが、100507で書いた飯塚先生の発言「認証機関による審査費用を顧客が負担したら状況が大きく変わる」と結びつけて考えると、可能性ゼロではありません。

それよりも、第二者(顧客)に適合性を監査してもらうのがグッドアイディアと考えます。
田中の実体験ですが、ある組織(A)がXという会社を紹介してくれました。AはX社にいろいろな商品の製造を委託しており、なんとかX社の品質管理を定着させたい、QMSに取り組むことでそれを実現したい、とお考えでした。コンサルティングの仕事をいただけるかわからない時期に、とりあえずAさんとX社を訪問し、製造ラインを見せていただいたり、使用している書類に目を通したりしました。顧客の眼は厳しいです。ISO的に判断するならそこまで指摘しないだろうと思えるレベルでも、改善すべき事項として次々と多数の指摘が出ました。
こういう組織に適合性を認めていただけるなら、認証機関によるお墨付きよりずっと重みがあるように思います。厳しさのレベルは二者≫三者>一者でしょう。
090527で、17050-1、17050-2における制約条件として、「ガイドライン、規準文書を参照することがむずかしい」と書きましたが、第一者で適合性を実証しようとすると難点になる(これで十分という判断に自信が持てない)のですが、第二者にお願いした場合、参照は第二者が行ってくれるので、客観性は高いと感じた次第です。

このような書き方をすると非難ごうごう状態になるかもしれませんが、第三者という立場は多少気楽です。利害関係はないのですから。顧客の立場では、小さなことを見逃してもっと大きな被害に遭いたくないですから(ハインリッヒの法則を思い出してください)ビシビシと指摘をします。その厳しい眼で「適合」なら、評価してもらう側も安心できるというものです。

いかがでしょうか。自己適合宣言のお手伝いも、もちろんしております。

QMSの有効性  100614

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年6月14日 11:36

QMSの有効性

有効性に関する議論は古くて新しい問題です。QMSに取り組んでいるのにあそこの会社は何をやっているんだろう。法律違反で訴えられたり、不良隠しをしているじゃないか、という事件がここ数年続々と報道されています。
そのようなことは急激に増えたのではなく、単に顕在化しただけだと思います。忘れられるのも速いですが情報が伝わるスピードもどんどん速くなっているからです。

なぜ法律違反や不良隠しが行われるのでしょう。
学生時代の第二外国語はドイツ語でしたが、嘘をつくことを雪玉(Schneeball)にたとえた話を読みました。小さな嘘を隠すために、だんだん大きな嘘をつかざるをえなくなっていくという内容でした。逆に読むと、大きな嘘をつかずに済ますためには小さな嘘もつかないことが重要なのです。
(ちなみに、最近発行されたウォーレン・バフェット伝では雪玉(snowball)は肯定的に使われているようです。)

本題のQMSの有効性ですが、有効性を高める/確保するためには小さなことを見逃さない、小さなことでも確実に処理していくことではないでしょうか。結果についても、実行過程についてもです。「小さなことからコツコツと」と言って参議院議員になった方もいらっしゃいます。この精神が大事です。
労働安全衛生の世界では「ハインリッヒの法則」が有名です。死亡者・重傷者が1人発生する陰には29人の軽傷者、300人のヒヤリハット経験者が統計的にはいる。∴死亡者・重傷者がでるような大事故を起こさないためにはヒヤリハット現象を軽く見ずに、安全確保を図ろうというものです。

品質管理とか品質保証を初めて教えてくれた先生は「ハインリッヒの法則」を応用されていました。クレームとか苦情が1件発生する背景には、流出はしなかったけれど社内で検出した不良があり、もっと源をたどるとプロセス上の不適合が多数あるのに対策が打たれていない、というのです。
プロセス上の不適合があったときに必ず製品の不適合が発生すれば状況が変わりますが、現状ではプロセスを守らなくても(手抜きをしても)なんとかなったじゃないか......たとえが不適切かもしれませんが、スピード違反をしたけれど検挙されなかった......ということがあるのです。「なんとかなった」が特別採用でなかったのなら、こういうときはむしろ、プロセスを考え直すよいチャンスなのです。製品の質は少なくともお客様の基準より許容差を狭く(厳しく)設定することをおすすめしますが、プロセス(作業標準)の設定には自由度があってよいのです。

QMSの有効性とはそもそもなんだ?については別の機会に書きたいと思いますが、有効性は結果だけでなく、実行場面についても考えるべきなのです。結果だけ良くしようとしてもだめで、プロセスが重要なのですが、あまり理解されていないように感じています。

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