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2010年8月 Archive

プロセスの監視・測定  100823

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年8月23日 17:19

プロセスの監視・測定

9001規格の8.2.3項は「プロセスの監視及び測定」です。規格の説明をする中で、田中が説明しづらいと感じている項目のひとつです。ちなみにもう一つは7.5.2項です。
理由はいくつかあるのですが、①コンサルティング対象の組織におけるプロセスとしてどのようなものがあるか、②その中で監視・測定の対象とすべきプロセスはなにとなにか、③どのように監視(測定)すればその組織にとって意味・メリットがあるか、などを確定するのに相当時間がかかるからです。実態を理解しないと説明しにくいですし、④プロセスの監視測定をするとどういうメリットがあるかを理解(納得)いただくにも時間がかかります(田中の説明のしかたが悪いからだろう、と言われればそれまでですが)。

QMSの世界でプロセスアプローチという概念が登場してからかなりの年数になりますが、組織はどうしても結果(アウトプット)を重視しがちです。提供している製品が目に見えるモノとしての工業製品である組織の場合は理解していただきやすいですが、サービス産業では提供しているもの(製品)が「プロセスそのもの」であるケースがあり、この場合「製品=プロセスの結果」という公式(用語の定義)が成立しません。「製品の監視・測定」≒「プロセスの監視・測定」のイメージになります。
たとえば博物館の場合、目に見えるモノとしては展示物がありますが、あくまでも見て(観て)いただくだけで、お客様の手元には残りません。結局、ミュージアムショップで購入いただいたグッズを除くと、提供しているのは知識、感動、驚きのような抽象的なものになります。

展示物があります。場合によっては説明しようと待って(構えて)いるボランティアがいます。展示物または展示物にまつわる話をすることがサービス提供と考えられますが、説明している(サービス提供というプロセスを実施している)ところを監視(測定)したい訳です。①どのようなやり方が可能でしょう。9001規格は「適切な方法を適用しなさい」と言っています。まさか、説明時間をストップウォッチで測定などしないでしょう。声の大きさ・明瞭さはありえます。②誰が監視(測定)者として適切でしょう。ノギスを使って検査するのとは別の意味合いで力量が必要でしょう。

プロセスの監視測定が可能な条件がいくつかあるのかもしれません。①規格は「プロセスが計画通りの結果を達成する能力があることを実証するものでなければならない」と言っているので、ある程度重要なプロセスを対象とすることになります。②「計画通りの結果」とあるので、アウトプットの適否と関連づけて監視測定しないと意味が薄れます。③なんらかの形でプロセスが文書化されていないと、目の前で行われていることが手順通りかどうかわかりません。文書化は書類だけでなく、ビデオで動きが明示されていてもいい(動的)ですし、作業のポイントが写真になっていてもいい(静的)でしょう。

田中が活動している博物館の現状は、プロセスの監視測定は行われていません。毎日自己評価することで補っています。プロセスを文書化したものもありません。あるのは、「この展示物はこういう意味を持っている。この分野では貴重なもの。キーワードとして○○は伝えてほしい。展示全体として□□のとっかかりになればいい。」というテキストを渡されています。先輩の技を盗んだり、関連情報をインターネットなどから収集して説明方法を変えてみたり、標準化にはまだまだ遠い世界です。

コペルニシウム  100820

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年8月20日 15:00

コペルニシウム

今回はマネジメントシステムとは全く無縁の話です。
高校の化学の時間で周期表(昔の用語では周期律表)を習って、化学が苦手になった方もいらっしゃると思います。原子量順に並べたときに、似通った性質をもった元素がある周期で現れることを1869年にメンデレーエフというロシア人が見いだしたのです。1869年といえば、日本では坂本龍馬が亡くなった翌々年です。
このことから、当時発見されていなかった元素を探す活動が活発になり、科学全体が進歩するきっかけとなりました。ニッポニウムという名前をつけそこなった人もいるのです。現在では探す活動は終わり、あってもおかしくない元素を作り出す(合成する)段階になっています。

半年前の話題になりますが、今年2月19日に、112番目の元素としてコペルニシウムという名称が正式に認められました。コペルニシウムは、コペルニクス的転回(地球中心説⇒太陽中心説)として知られるコペルニクスにちなんだ名前で、2月19日はコペルニクスの誕生日です。命名権はその元素を見つけた/作った個人又は機関に与えられます。誰がその元素を見つけた/作ったのか、の判定が命名権の前にあるのですが、ここでは触れません。今回はドイツのGSI(重イオン研究所)に命名権が与えられました。コペルニクスはポーランド人です。なぜ、ドイツの機関であるGSIはポーランド人の名前をつけたのでしょうか。

コペルニクスの国籍論争が過去にあったそうです。立派な業績を残した人を身近な人と感じたいのは誰でも同じということでしょう。2008年「自発的対称性の破れ」でノーベル賞を受賞した南部陽一郎さん、同じく2008年「オワンクラゲ」で受賞した下村脩さんはアメリカで活躍していて、その業績はアメリカでのものとも考えられるのですが日本人が受賞した、と国内では大々的に報道しました。
コペルニクスは、「多民族国家であるポーランド王国の国民で、ドイツ語の方言を母語とする、ドイツ系ポーランド人」ということで落ち着いているそうです。

コペルニクスは天文学者であっただけでなく、法学者、医者であり、教会では司祭の立場でもあったのです。「天体の回転について」という著作は彼が亡くなる1543年まで出版されませんでした。迫害を恐れていたため、と伝えられています。いくつもの分野で活躍したこと、宗教的な立場と自然界を客観的に観察する立場の葛藤という面で、非常に興味深い人物です。

科学の世界はかなり人間くさい世界だと、つくづく思います。ちなみに、誰がその元素を見つけた/作ったのかの判定と命名権の授与は、IUPAC(国際純正・応用化学連合)がIUPAP(国際純粋・応用物理連合)の協力を得て実施しています。会長、副会長を務めるなど、これらの機関では多くの日本人が活躍しています。

余談ですが、2010年は国際化学年で、高校生による国際化学オリンピックが日本で開催されるなど、化学にちなんだ行事が並んでいます。化学オリンピックでの日本代表4人の結果ですが、2名が金賞、2名が銀賞を獲得しました。田中の先輩も日本化学会の理事として、問題作成・会場所提供等で大忙しだったようです。

統合マネジメントシステム  100812

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年8月12日 13:06

統合マネジメントシステム

20090428でQMSとEMSの両立性について見解を述べました。2ヶ月ほど前に、QMS/EMS統合マネジメントシステムの審査に立ち会う機会をいただき、それ以後、これまで以上に両立性に注目してきました。

今年の6月にボゴタでTC176(QMS)総会が、7月にレオンでTC207(EMS)総会が開かれ、それぞれの状況について日本規格協会内にある国内委員会から報告されました。

TC176では9004規格についても審議しますが、100513で書いたように9004に関しては昨年改正されたので、次の改正作業の話にはなっていません。今回9001と9004が別々の概念の規格になってしまったことをどう総括するのか、TC176の製品である9001・9004両規格をどのように普及させ、将来どういう形にするのがよいか、という議論をしているようです。
9001規格は2008年の追補改正から1年半以上経過しているので、次の改正時期をにらみながら議論が進んでいます。改正時期は最短で2015年、とされています。

EMSでは多数の規格があり、TC(Technical Committee)207の中にはたくさんのSC(Sub Committee)がありますが、14001:2004規格は2008年に「確認」が済んでいるので、こちらも大急ぎで審議を進める状況ではありません。

結果としてですが、どちらの報告にも、QMSとEMSの統合を目指すという言葉が登場していません。田中の情報入手能力が低下しているのか、田中がマネジメントシステムの統合に興味を持った頃には、ISOの世界では「もう、やーめた」になってしまったのでしょうか。
そのわりに、多くのマネジメントシステム規格で、他の規格と組み合わせて使える、とうたっています。
9001:組織が品質マネジメントシステムを、関連するマネジメントシステム要求事項に合わせたり、統合したりできるようにしている。(14001、OHSAS、財務、リスクを想定)
14001:組織がこの規格の要求事項に適合した環境マネジメントシステムを構築するに当たって、既存のマネジメントシステムの要素を適応させることも可能である。(9001、OHSAS、財務、リスクを想定)
27001:この規格は、組織が自らのISMSを関係する他のマネジメントシステムの要求事項に調和させること又は統合することが可能なように設計されている。(9001、14001を想定)
18001(OHSAS):組織がこのOHSAS規格の要求事項に適合したOH&Sマネジメントシステムを構築するに当たって、既存のマネジメントシステムの要素を適応させることも可能である。(9001、14001、Security、財務を想定)
25999(BCM):この規格の導入及び運用において、関係するマネジメントシステムとの一貫性及び統合を支援している。(9001、14001、27001を想定)

とりあえず田中は、仮想のQMS/EMS統合マネジメントシステムのシステム文書を検討中です。当初はQMSをベースにEMSの要素を付け加えるつもりでしたが、 EMS をベースにQMSの要素を付け加えるほうが作りやすいかな?と思い始めています。下位文書の数をできるだけ絞ったものにする予定です。

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