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2010年5月 Archive

持続的成功  100528

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年5月28日 13:52

持続的成功

9004規格のテーマは「持続的成功のためのマネジメント」です。持続的成功の定義は「自らの目標を、長期にわたり達成し維持する組織の能力がもたらす状態」とあります。
用語の定義はきわめて重要なことがらですが、わかりづらい定義だと感じます。それはおいて置くとして、この定義のよいところは、顧客の要求を達成・実現するのではなく、自らの目標を達成・維持することを考えていることでしょう。田中は常々こう言ってきました。「9001規格があるから自分たちの組織があるのではない。9001規格がマネジメントの手本なのでもない。組織が存在し続けていることに意義があり、組織には設立の趣旨・目標があってそれを追い続けてきた実績がある。たまたま9001規格という全世界的に認知された考え方があるので、自分たちの組織運営に活用すればよい。9001規格のよい部分を取り入れて運営の質を高めていけばよい。認証ということを考慮すると、多少実施しないといけないことが増えるが。」

自分たちの組織をどういう方向にもっていきたいのか、今年度が終わった時点ではどうなっていたいのか、5年後のあるべき姿(組織像)は?・・・を品質という観点から考えたものが品質方針であり品質目標なのです。この方針・目標そのものには善し悪しはないのです(御社の品質方針はすばらしいですね、とか、こんな品質目標ではダメだからもっと高いものにしなさい、などと外部の人間が評価する必要はないのです)。方針・目標の実現・達成に向けた運営方法・実施内容には善し悪しがありえます。9001に書いてある内容を咀嚼して、組織の実態に合わせて実行した場合にはうまくいく可能性が高いのです。
このあたりは9001よりも14001のほうがうまくできているように感じます。方針/目的/目標という三段構えで自分たちの方向性を定め、一歩一歩最終的な目的地に近づこうとします。年度の目標という短期的なものだけを設定したのでは「持続的」の実現は中途半端になる恐れがあります。長期計画をまず立てて、今年度の方針・目標を設定するならば、9001に不足している部分を補うことができます。

9004規格にリスクの特定という概念がはいっているのも、9001の弱点を補強することにつながります。出典を忘れてしまいましたが、マネジメントシステム規格の中で、リスクの概念を持っていないのは9001だけだ、とありました。なるほど、たしかにそうだ、と今更のように気づかされました。
14001:環境側面の特定、環境影響の評価、緊急事態への準備など、
TS16949:緊急事態対応計画、エラーの予防、
9100:リスクマネジメント、13485:リスクマネメントなどです。

PDCAの考え方は正しいのですが、なにも考慮せずに計画を立てることはできません。9001に取り組む以前から組織の活動はしてきたわけですし、永続してきたという実績、組織存亡の危機を乗り越えてきた実績をベースにして計画を立てるのです。9001にはリスクの概念を持っていませんが、考えをとりいれることで一歩進んだQMSになるといえます。

9004規格

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年5月13日 18:22

9004規格 100513

3月16日に日本規格協会主催の9004規説明会がありました。
前回書きましたが、全産業分野合計でのQMSのJAB登録件数は減少しています。9001討論会参加者も減少して、品質マネジメントシステムに対する関心が薄くなっているように感じます。しかし、9004規格の説明会は盛況でした。主催者側が狭い会場を準備したせいかもしれませんが、超満員という表現があてはまる状況でした。

昨年改定された9004規格は「組織の持続的成功のための運営管理―品質マネジメントアプローチ」という表題です。2000年版のような「9001規格とのコンシステントペア」の考えはなくなり、品質マネジメントシステムという言葉が表題から消えました。
9001:2008規格は9001:2000規格を追補改定したものですが、ISO9001:2009はそうではなく、番号を引き継いでいるが新規に制定したと考えたほうがよいように感じました。規格のコンセプトとして、
① 9000にある八つの原則に加え新しい要素(俊敏性、革新、学習、自立性など)を追加
② 顧客に限定せず、社会のニーズ・期待を満たす
③ 効果的・効率的に組織のパフォーマンスを改善
④ 競争優位を得て、持続的な成功を達成する組織になる 等が含まれています。
マネジメントの対象は多数あり、手法もまた多数あるので、9004の内容は盛り沢山といえます。しかし、規格に書いてあることを全て実施する必要はない、全項目で満点を満たす必要はないとの説明を受けました。それならやってみよう、という組織が多数現れることを期待します。選択と集中、組織の実態にあったバランスの取れた状態を目指せばよいのです。

気になるのは、ISOの9004規格は2009年に改定済みなのに、JIS規格が未発行なことです。この秋には発行できるであろう、との情報でしたが、律儀な委員の先生方の作業としては遅いと感じました。
9004規格改定の議論において、日本側委員の方々は、JIS Q 9005/9006をひっさげて、「質マネジメントシステムはかくあるべき」とWorking Groupで主張したのですが、議論の過程で肝心のところを削除されたことをかなり残念がっていました。そのこととJIS規格発行の遅れは無関係なのでしょうが、意見が通らなかったことについては感情論のように聞こえて、ちょっと気になりました。
うがった見方かもしれませんが、「質マネジメントシステムはかくあるべき」と主張する日本側委員の方々と国内の組織との間にはかなり隔たりがあると思います。理想論を掲げ早くここまで来なさい、ここが最終的に到達すべきレベルだよと叱咤激励されているのですが、組織側はなかなか追いつけないのです。9001でさえ、うまく活用できている組織はそうないのですから。このことについてはコンサルタントという立場では反省すべきことが多いのです。
日本側委員対国内組織と同じようなことが、日本側委員対海外委員との間でもある(あった)のだろう、と推測しています。

JIS Q 9005/9006を基準文書として議論した結果が9004:2009です。まず基準文書に選択されたことで日本側委員の目的の半分は達成したと考えるべきでしょう。多数の国の代表が参加する中で、日本側委員のすべての主張が通る筈はないのです。二国間の折衝・調整でさえそうですし、国連総会もしかりです。
委員の方々の努力/尽力には敬意を表しますが、決定された内容についての不満表明はいただけない、というのがコメントです。早くJIS Q 9004:2010が発行されることを希望します。英文の規格では説明も議論もしづらいので。

9001公開討論会

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年5月 7日 16:31

9001公開討論会 100507

3月15日に日本適合性認定協会(JAB)主催の討論会がありました。今回のテーマは「9001認証の社会的意義と責任」でした。これに関しては、4月28日付けでJABのホームページに概要が掲載されたので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。田中は都合がありまして、全部の報告/パネルディスカッションを聞くことができなかったのですが、いくつか感じたことがあります。

(1)登録件数の集計
国内で活動している認証機関の登録件数をJABが把握し、四半期毎の実績がJABのホームページで確認できます。田中はこの数字がISOに報告され、ISOが全世界の登録件数を把握しているのだと信じていました。そうではないことが今回の討論会でわかりました。
JABの事務局が、ISO 調べとJAB調べで登録件数が違う、と言ったのです。ISOは独自に調査した結果を発表しているのです。推定ですが、JAB はJAB認定の認証機関だけを対象としているのに対して、ISOはJAB認定以外の認証機関による数字を含んでいるのです。
9001規格では統計的手法の使用を義務づけてはいませんが、推奨しています。単純な足し算さえ、ISOとJABで不統一というのは残念、と感じました。JAB もJAB認定以外の認証機関による認証数の把握に努めているようですが。

(2)飯塚先生の基調講演
飯塚先生の話しぶりは「君たち、私の話を理解できるかな?できるだけ平明な言葉で話すから、理解できない場合、君のレベルが低いせいだよ」というニュアンスがあるのですが、田中は理解できています。話の主旨が一貫していて、歯切れがよいのです。

今回のテーマは「9001認証の社会的意義と責任」でしたから、認証されているにもかかわらず、品質問題を起こす組織があると、マネジメントシステムの認証という制度そのものに対する信頼性に影響する、ということが根底にありました。
認証制度のビジネスモデルとして、審査費用を申請組織が支払う現状では、申請組織は簡単に認証が得られて維持できることを望むのは当然である。ここに「制度そのものに対する信頼性」という問題の根っこがあるのではないか。審査費用を申請組織が支払うのでなく、その顧客が支払うのであれば事情はかなりちがうであろう、限りなく架空の話だが。というのが飯塚先生のご意見でした。なるほど、たしかにそうだ。

もう一つ、節穴審査という話がでました。現在の審査では、審査員が不適合を見つけることができなかった場合には「QMSは適合」となっている。審査員にしっぽをつかまれないように、質問事項に対してだけ答え、余分な説明はしない、というのが多くの受審組織のふるまいである。これでは、システムの真の良否を審査できないであろう。
ところが、IAF(17021)は「適合であるという十分な証拠がなければ認証を授与しない」という考えを示していて、実態と乖離している。組織自身が積極的に「適合している」ことを説明し、説明内容を審査員が「検証・妥当性確認する」審査を目指さないといけない。なるほど、たしかにそうだと感じました。

(3)参加者の減少
以前ですと、開始時刻直前に会場に到着すると、空いている席を探すのが大変でした。9001及び/または討論会に対する関心が高かったのだと思います。会場の広さはあまり変わらないように思いますが今回1/3の席は空いていました。関心を持つ人(または組織)が減少することと、JAB登録件数が全体(全産業分野合計)で減少していることは無関係ではないでしょう。こんなことにまで、政府がしっかりしないからという押しつけはできませんが、もっと関心が高くてよいのではないでしょうか。
ISO 調べでは、2008年の国別登録件数変化で、日本は10000件以上のマイナスで世界一だったそうです。産業分野別では増え続けている分野のほうが多いのですが。

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