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コペルニシウム  100820

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2010年8月20日 15:00

コペルニシウム

今回はマネジメントシステムとは全く無縁の話です。
高校の化学の時間で周期表(昔の用語では周期律表)を習って、化学が苦手になった方もいらっしゃると思います。原子量順に並べたときに、似通った性質をもった元素がある周期で現れることを1869年にメンデレーエフというロシア人が見いだしたのです。1869年といえば、日本では坂本龍馬が亡くなった翌々年です。
このことから、当時発見されていなかった元素を探す活動が活発になり、科学全体が進歩するきっかけとなりました。ニッポニウムという名前をつけそこなった人もいるのです。現在では探す活動は終わり、あってもおかしくない元素を作り出す(合成する)段階になっています。

半年前の話題になりますが、今年2月19日に、112番目の元素としてコペルニシウムという名称が正式に認められました。コペルニシウムは、コペルニクス的転回(地球中心説⇒太陽中心説)として知られるコペルニクスにちなんだ名前で、2月19日はコペルニクスの誕生日です。命名権はその元素を見つけた/作った個人又は機関に与えられます。誰がその元素を見つけた/作ったのか、の判定が命名権の前にあるのですが、ここでは触れません。今回はドイツのGSI(重イオン研究所)に命名権が与えられました。コペルニクスはポーランド人です。なぜ、ドイツの機関であるGSIはポーランド人の名前をつけたのでしょうか。

コペルニクスの国籍論争が過去にあったそうです。立派な業績を残した人を身近な人と感じたいのは誰でも同じということでしょう。2008年「自発的対称性の破れ」でノーベル賞を受賞した南部陽一郎さん、同じく2008年「オワンクラゲ」で受賞した下村脩さんはアメリカで活躍していて、その業績はアメリカでのものとも考えられるのですが日本人が受賞した、と国内では大々的に報道しました。
コペルニクスは、「多民族国家であるポーランド王国の国民で、ドイツ語の方言を母語とする、ドイツ系ポーランド人」ということで落ち着いているそうです。

コペルニクスは天文学者であっただけでなく、法学者、医者であり、教会では司祭の立場でもあったのです。「天体の回転について」という著作は彼が亡くなる1543年まで出版されませんでした。迫害を恐れていたため、と伝えられています。いくつもの分野で活躍したこと、宗教的な立場と自然界を客観的に観察する立場の葛藤という面で、非常に興味深い人物です。

科学の世界はかなり人間くさい世界だと、つくづく思います。ちなみに、誰がその元素を見つけた/作ったのかの判定と命名権の授与は、IUPAC(国際純正・応用化学連合)がIUPAP(国際純粋・応用物理連合)の協力を得て実施しています。会長、副会長を務めるなど、これらの機関では多くの日本人が活躍しています。

余談ですが、2010年は国際化学年で、高校生による国際化学オリンピックが日本で開催されるなど、化学にちなんだ行事が並んでいます。化学オリンピックでの日本代表4人の結果ですが、2名が金賞、2名が銀賞を獲得しました。田中の先輩も日本化学会の理事として、問題作成・会場所提供等で大忙しだったようです。

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