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2011年1月 Archive

9001認証に対して期待される成果 110124

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年1月24日 15:46

認定されたISO9001認証に対して期待される成果
"Expected Outcomes for Accredited Certification to ISO9001"

表題の冊子がJABから発行されました。この冊子の内容は、2010年7月にIAF/ISOの共同コミュニケとして発表され、2010年10月のIAF総会で正式に決定・発表されたものです。

子供じゃあるまいし、なにを今更、という印象を田中は持っているのですが、9001規格の2008年版改定時の"Output matters"と同様の概念として作成されたのでしょう。9001認証を得ていても、その組織のアウトプットが顧客または法令規制要求事項を満たしていないケースが散見されることから、"Output matters"についての解説が補足されました。

「期待される成果」は、AからIまで9項目あります。その視点は被認証組織の顧客のものです。その多くは9001規格4.1項の表現を変えたものという印象です。後半は次のような記述となっています。
G項:不適合防止を目指す意欲があり、下記を適切に実施するための体系的な改善プロセスを持っている(ことが期待される)。
1. どうしても起こり得る不適合を全て修正する(引渡し後に検出された製品の不適合を含む)
2. 不適合の原因を分析し、再発しないよう、是正処置をとる
3. 顧客からの苦情に対応する
H項:有効な内部監査及びマネジメントレビューを実施している(ことが期待される)。
I項:品質マネジメントシステムの有効性を監視、測定及び継続的に改善している(ことが期待される)。

田中の読み方ですが、要するに、9001規格に書いてあることを確実に実行していることが期待される、と言っているのです。
G項で①「どうしても起こり得る不適合」という表現があり、QMSに取り組んでいても不適合が発生する可能性があることを示唆していること、②不適合は製品だけでなく、プロセスやシステムにも起こり得ることが推察されること、③8.5.2項では不適合の確認⇒原因の特定⇒是正処置の決定とあるのに対し、「原因の分析」をすべきであるとしていることが目新しいといえば目新しいと感じました。これまで田中は、是正処置と予防処置を対比して、予防処置のほうが効果大である(不適合は発生していないので時間的な余裕があり、コストをかけずに有効な処置を検討/実施できる)と説明し、推奨してきましたが、全ての不適合を修正し是正処置をとることをIAF/ISOは推奨しているので、少し表現を和らげようかと考えています。
H項には、有効な内部監査、有効なマネジメントレビューとあります。どういう状況が有効なのか、実施しても実効性がないと感じている被認証組織は立派なトップマネジメントまたは管理責任者がいらっしゃる場合でしょう。もう少し具体的な説明が欲しいところです。

この「期待される成果」を読む被認証組織がどれだけあるのか不明です。また、認証機関による審査時に、審査員がどこまで説明するのか、説明する内容がどこまでIAF/ISOの意図に沿っているのか、この冊子を発行したことの意義は?を考えると、ややさみしい気がします。

目的、目標がQMSの起点 110111

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年1月11日 17:05

目的、目標がQMSの起点

前回に引き続く話です。9001規格には用語の定義として、目的という概念がないので、おおざっぱなイメージになりますが、目的は中期的な到達点、目標は短期的な到達点と考えることができます。
目的は方針と整合したものです。方針が「年率☆%の成長」であれば、目標はそれに見合う、売上高◎◎億円/上半期、◇◇億円/下半期となります。目標は、四半期・月単位・週単位等に落とし込んだ指標です。

設定段階では、方針⇒目的⇒目標の順ですが、実績評価段階では、目標(に相当する実績)を積み上げたものが目的(に相当する実績)であり、目的を積み上げたものが方針の実現度合いとなるのです。半年とか一年単位で管理した場合には、未達に終わった場合の修正がききませんから、最長でも月単位で管理(実績を評価)し、小さなズレの理由(原因)を見極めて、放置しないことが重要です。不適合の管理と同じことを、目標に対して短いサイクルで繰り返すのです。そして、結果の悪さ加減を容認しないことが重要です。結果を容認するなら、むしろ次期の設定段階で目的/目標を修正するのです。

9001規格の5.6.1項(マネジメントレビュー)には「品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価を行う」とあります。マネジメントレビューは多くの場合、半年に1回実施ですから、頻繁に目標を変更するわけにはいきません。設定段階では熟慮し、設定したらコロコロ動かさないのです。組織を取り巻く状況・経済環境は日々変化しますが、その変化に振り回されない努力も不可欠です。(経営者には、小さな変化を見逃さず、変化を先取りする力も要求されていますから単純な話ではないのですが)

"Control"の日本語として、「管理」は、現状がどういう状態であるかを把握していれば、とりあえず合格です。しかし"Control"の本来の意味としては、「支配」「統制」「制御」があり、考えている方向からずれていれば、正しい方向に進むように修正する機能=フィードバック機能がなければいけないのです。統計的品質管理の場合には、間違いなくフィードバック機能がついていて、統計的にみて逸脱している場合には、修正(プロセスの変更)を行うのですが、マネジメントシステムの「管理」の場合にはその機能を発揮させていないケースが多々見られます。

マネジメントシステムを有効なものにするには、まず、トップマネジメントが組織をどの方向にもっていきたいかという方針を立てること、方針を中期の目的に置き換えること、部門階層ごとに方針・目的を理解して、短期の目標に置き換えトップの承認を得ることで、組織全体の共通理解になります。この段階で「目標」は必達目標となるのです。あとは実行あるのみ、実現/達成を目指して努力するのです。
努力といっても目新しいことをしようというのではないのです。実施すべきプロセスは決まっています。手順書という形で文書になっているかどうかは問題ではなく、手順通りにプロセスを実行するのです。手順がなければ、9001規格の4.1項の要求事項を満たせないからです。手順通りにプロセスを実行しているのに、結果が出ないのは、設定したプロセスが正しくない(最善ではない)ことを示唆しています。プロセスを修正することを検討すべきです。

QMSの起点は、目的、目標と考えます。方針と同様、あればよい、というものではないのです。

謹賀新年 110106

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年1月 6日 18:19

あけましておめでとうございます。
新年を新しい事務所で迎えました、今年もよろしくおつきあいの程お願い申し上げます。

昨年、日本はいろいろな荒波に翻弄されました。中国船が尖閣諸島に侵入した、ロシア大統領が国後島に足を踏みいれた、円高が続き株価の低迷が継続した、元幹事長が国会の招致に応じない、TPPに参加するのかしないのか、等々、内政も外交も「コントロール」ゼロの状況が続きました。

2011年(平成23年、辛卯)が良い年であることを祈りますが、新年だからといって明るい話が待っているわけではありません。今年も荒波はいろいろな形で押し寄せてくるでしょう。それに敢然と立ち向かうべきなのが、まず、政治を担っている人たち、次に組織のマネジメントを行う立場の人々でしょう。一般庶民も押し流されるだけでなく、自主的な活動をしなければいけません。
ちなみに、辛卯の年、過去には次のようなことが起きています。
1951年(昭和26年、太平洋戦争が終結して6年後)サンフランシスコ講和会議が開催され、平和条約が締結されるとともに、日米安全保障条約が調印された。日本は被占領状態から解放され、ILO、UNESCOに加盟した。
1891年(明治24年)東京商工会議所が設立された。主役は渋沢栄一。足尾の鉱毒問題が起きた。
1951年、田中はまだ小学生低学年で、明確な記憶はありませんが、終戦直後の混乱はある程度おさまっていたのだと思います。当時の大人全体の努力もあって、経済発展にひた走っていたというか、努力した分だけ企業なり国の成果として実感できた時代でした。現在、失われた十年が二十年となり、努力しても「坂の上には暗雲ばかり」の状況になってしまいました。

ISOが主張するマネジメントシステムは、このような状況でどのように役立つのでしょう。
QMSの世界では、P⇒D⇒C⇒Aというサイクルを推奨していますが、既にサイクルを回している場合にはむしろC⇒A⇒P⇒Dのサイクルで考えた方がよいのです。即ち、現状の分析(Check)を、半年ごとのマネジメントレビューの形でなく、過去に対して長期の視点でレビューするのです。具体的には、マネジメントシステム導入前と導入後の事実を改めて整理し、予定した(狙った)通りにいったこと/いかなかったことの仕分けをすることが重要でしょう。当然その理由を分析することで今後に生かします。

もっと重要なことは、「組織の目的、目標」です。これが適切に設定されていることがQMSの大前提です。「予定した(狙った)通り」という言葉を使いましたが、予定・狙いがなければ、また、予定・狙いがあっても不適切な場合にはマネジメントもへったくれもないのです。

新年、まだ頭の回転がうまくいかないので、中途半端な終わりで失礼いたします。

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