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西堀栄三郎  111207

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年12月 7日 15:46

西堀栄三郎

西堀栄三郎さん(1903年-1990年)は多方面で活動した人です。戦後(1945年8月15日以降)の品質管理技術を牽引し、第一次南極観測(1957-58年、京都大学教授時代)に当たって越冬隊の隊長を務めたり、日本の原子力平和利用についての道筋を作り上げた人でもあるのです。
何か日本の産業界・技術開発で新しいことを始めようとした時に登場した人と言えるでしょう。「新しい、未踏の世界は西堀にやらせれば間違いない」と周囲の人が考え、担ぎ出したからです。

今、西堀さんが存命であったら、福島の原発事故に対してどのような見解を述べるだろうか、どのように政府・東電を叱り飛ばすだろうかと、興味があります。
「南極越冬記」「西堀流新製品開発」「品質管理心得帳」などの著作がありますが、中には、「石橋を叩けば渡れない」「五分の虫にも一寸の魂」などユニークな題名の本も書いています。そういう著作の中で、「準備とか計画というものは、思いもよっている(想定内の)ものしかできない。思いもよらないことはわからない(想定外という範疇から抜け出せない。気づかなかったことが残っている筈である)のに、準備や計画が完全無欠であるように思ってしまうことが怖い。」「思いもよらないことが必ず起きるぞ、準備というものは必ず不完全なものなのだ、と考えることが重要だ。」と述べています。

最近の言葉で言うと「リスク管理」ということになるのでしょうが、思いもよらないことが起きた時に、あわてふためかず、「おお発生したか」くらいの沈着冷静さが必要だとも書いています。西堀さんが存命であったら、だれもがまず西堀さんに「先生どうしたらよいでしょう?」と指南を求めたのではないかと想像します。

原子力船開発事業団の理事だった時に、原子力船の安全性を説く中で「原子力の平和利用を恐ろしいものだ、危険なものだと思っている人は、文明から置き去りにされた原子アレルギー患者で、時代遅れもはなはだしい」と発言したと伝えられ記録されています。この発言は、いい加減な管理をしても原子力が安全だと言っているのではありません。しかるべき管理をすることで十分にエネルギーとして安全に有効活用が可能だと言っているのです。おそらく、西堀さんがそう言うなら安心してよいだろう、と判断した人が多かったのだと思います。それほど、西堀さんの発言には重みがあり、信用されたのです。

今回の事故発生当初だけでなく、9か月が過ぎようとする現在でも、政府、東電、関係科学者の発言をそのまま信用している人がどれだけいるでしょうか?テレビの報道はどこまで真実・真意を伝えているのか不明ですし、新聞などを読んでも、だれの発言を信用すればよいのかわからないので、自分の家族は自分で守る放射線量についても自分で測定する、という記事であふれています。

西堀さんの経歴を少し追加しますと、学生時代には探検部に籍をおき、「雪よ岩よ我らが宿り」の雪山賛歌を作詞しました。京都大学理学部助教授から東芝に移り、真空管の研究者として活躍しました。1980年のチョモランマ登山隊では総隊長を務めました。77歳にしてです。

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