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2011年12月 Archive

今年の反省  111226

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年12月26日 18:55

今年の反省

もう今年も残すところ数日となりましたが、福島原発は依然として状況は好転の兆しを見せていません。「収束」という言葉が首相の口から発せられましたが、厳しい寒さに向かう中、多数の方々が帰宅して地震前と同じ暮らしに戻る見通しは全く立っていない状況です。何をもって収束と言うのか自体が合意されていないので、新聞の論調でも、空虚な発言と感じた人が多かったようです。広範囲の地域で節電を要請され、平凡な市民生活を営みにくい状況が続いています。

ふり返ってみると、失った信用を回復するのは容易なことではない、ということを実感した一年でした。他山の石という言葉がありますが、身近なところにも多数の石がころがっていました。東京電力、原子力保安院、政府首脳たちです。
他人のことばかりでなく、自分の言動にも気をつけたいと思います。

コンサルタント業は信用されてはじめて成り立つ職業です。私はコンサルタントです、と名乗ることに対する要求事項とか規制事項はありません。誰でも自由に名乗ることができます。
しかし、コンサルタントとして認めていただくためには、どのような準備をすればよいのか、どのような知識を身につければよいのか、どのような対話スキルを持つべきか、大部分が手探りです。仕事を下さる方(企業/組織)がどのようなニーズ・期待をもっていらっしゃるのか、何回か面談する中で感じ取るのですが、コンサルティング期間終了近くになって初めて理解できた、というお粗末な結果の時も過去にはありました。申し訳ない限りです。
今後は、顧客のニーズ・期待を可能な限り早く正しく感じ取って仕事にかかりたいと思います。

お客様が景気の動向に一喜一憂しないでよい、日本だけでなくできる限り広く世界の人たちが委縮せず、幸せを感じられよう、自分の仕事を通して貢献できればいいなあと思います。

マネジメントシステムは一組織のためのものではなく、ステークホルダーはもとより、世の中全体の役に立つものだと確信できるような仕事をしていきたいと思います。

非常事態又は特殊な状況  111221

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年12月21日 16:55

非常事態又は特殊な状況

110318で書きました「地震災害に伴うJABの対応」の続編です。
JABが、12月9日付けホームページで、「認定機関、適合性評価機関及び認証された組織に影響を及ぼす非常事態又は特殊な状況の管理に関するIAF参考文書」を告知しました。

認証機関(適合性評価機関)や認証された組織を拘束するものではありませんが、基本的な考え方を示したものです。この通知は、110318で書きました「マネジメントシステムの認証を受けた組織の皆様へ」という東日本大震災の災害に伴うJABの対応に置き換わるものですが、IAF(International Accreditation Forum, Inc. 国際認定フォーラム:ISO認証制度に関する国際団体)として参考基準を定めたところに意義があります。
また、振り返ってみますと、大震災発生から4日後には「マネジメント・・・・・・組織の皆様へ」という大震災の災害に伴うJABの対応方針をいち早く発行したことはすばらしい手際であったと思います。

序文はでは次のように説明しています。
各組織は、通常の事業環境においても常にさまざまな好機会(opportunities)、試練(challenges)、リスク(risks)に直面している。しかしながら、組織の統制を超えた非常事態または特殊な状況(extraordinary events or circumstances)は発生する。
具体的に想定している状況は次のようなものです。戦争、テロ、暴動、政情不安、ストライキ、地理的・政治的緊張、パンデミック(世界的規模での感染症同時流行)、洪水、地震、悪意のあるコンピューターハッキング、犯罪、その他の天災又は人災です。
東日本大震災をきっかけとしてIAF内での議論が始まったのかは不明ですが、東日本大震災だけでなく、地理的・政治的緊張の例としては中国漁船と韓国取締船の関係があり、洪水はタイの事例でわかるように、「組織の統制を超えた非常事態/特殊な状況」は身近なものだと言えます。

この文書(IAF Informative Document for Management of Extraordinary Events or Circumstances Affecting ABs, CABs and Certified Organizations)が発行されたことで、認証された組織が実施しなければいけない事項が増えるわけではありませんが、「認証された組織に影響を及ぼす非常事態または特殊な状況」の概念は、リスク管理/事業継続の概念につながりがあり、注目に値すると思います。
・いつ平常どおりに機能できるようになるか?
・代替の製造及び/または流通サイトを必要とするか?
・災害復旧計画、緊急時対応計画をもっていた場合、その計画通り実施できたか、有効であったか?
・マネジメントシステムの運用はどの程度影響を受けたか? 等々
の観点で、適合性評価機関(認証機関)は認証した組織を評価し審査日程に反映すべきだ、としています。

実際に大きな災害、特殊な状況にさらされた時にどこまで実行可能かは不明ですが、同じ観点でマネジメントシステムを自己評価することは意義があると考えます。

蛇足ですが、原文の発行日は11月8日で、適用(発効)日は2012年11月8日となっています。

西堀栄三郎  111207

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年12月 7日 15:46

西堀栄三郎

西堀栄三郎さん(1903年-1990年)は多方面で活動した人です。戦後(1945年8月15日以降)の品質管理技術を牽引し、第一次南極観測(1957-58年、京都大学教授時代)に当たって越冬隊の隊長を務めたり、日本の原子力平和利用についての道筋を作り上げた人でもあるのです。
何か日本の産業界・技術開発で新しいことを始めようとした時に登場した人と言えるでしょう。「新しい、未踏の世界は西堀にやらせれば間違いない」と周囲の人が考え、担ぎ出したからです。

今、西堀さんが存命であったら、福島の原発事故に対してどのような見解を述べるだろうか、どのように政府・東電を叱り飛ばすだろうかと、興味があります。
「南極越冬記」「西堀流新製品開発」「品質管理心得帳」などの著作がありますが、中には、「石橋を叩けば渡れない」「五分の虫にも一寸の魂」などユニークな題名の本も書いています。そういう著作の中で、「準備とか計画というものは、思いもよっている(想定内の)ものしかできない。思いもよらないことはわからない(想定外という範疇から抜け出せない。気づかなかったことが残っている筈である)のに、準備や計画が完全無欠であるように思ってしまうことが怖い。」「思いもよらないことが必ず起きるぞ、準備というものは必ず不完全なものなのだ、と考えることが重要だ。」と述べています。

最近の言葉で言うと「リスク管理」ということになるのでしょうが、思いもよらないことが起きた時に、あわてふためかず、「おお発生したか」くらいの沈着冷静さが必要だとも書いています。西堀さんが存命であったら、だれもがまず西堀さんに「先生どうしたらよいでしょう?」と指南を求めたのではないかと想像します。

原子力船開発事業団の理事だった時に、原子力船の安全性を説く中で「原子力の平和利用を恐ろしいものだ、危険なものだと思っている人は、文明から置き去りにされた原子アレルギー患者で、時代遅れもはなはだしい」と発言したと伝えられ記録されています。この発言は、いい加減な管理をしても原子力が安全だと言っているのではありません。しかるべき管理をすることで十分にエネルギーとして安全に有効活用が可能だと言っているのです。おそらく、西堀さんがそう言うなら安心してよいだろう、と判断した人が多かったのだと思います。それほど、西堀さんの発言には重みがあり、信用されたのです。

今回の事故発生当初だけでなく、9か月が過ぎようとする現在でも、政府、東電、関係科学者の発言をそのまま信用している人がどれだけいるでしょうか?テレビの報道はどこまで真実・真意を伝えているのか不明ですし、新聞などを読んでも、だれの発言を信用すればよいのかわからないので、自分の家族は自分で守る放射線量についても自分で測定する、という記事であふれています。

西堀さんの経歴を少し追加しますと、学生時代には探検部に籍をおき、「雪よ岩よ我らが宿り」の雪山賛歌を作詞しました。京都大学理学部助教授から東芝に移り、真空管の研究者として活躍しました。1980年のチョモランマ登山隊では総隊長を務めました。77歳にしてです。

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