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国際化学年  110716

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2011年7月16日 18:39

国際化学年

今年はキュリー夫人がノーベル化学賞を受賞して100年に当たることから「国際化学年」とされています。田中は化学を専攻しました。田中が化学を専門にしようと考えたのは、化学のもたらす成果がすばらしいものだと感じ、自分も化学を通して社会に貢献したいと考えたからです。その頃は、同じ気持ちの人が多く、競争は結構厳しいものがありました。高校時代の先生の影響もありました。50年以上前の話です。
ところが、イタイイタイ病(カドミウムが原因物質、1910年代から発生していて、1955年に富山県の医師が命名)や水俣病(メチル水銀が原因物質、1956年に発生が確認され原因物質特定は1968年)、四日市ぜんそく(亜硫酸ガスが原因物質、1960年代のコンビナート建設頃から発生)のような、工場・鉱山から排出される化学物質による公害問題が顕在化するようになって、化学を志す人が急速に減少した時期が長くあります。

化学物質そのものが意思をもって悪さをしているのではなく、化学工場における副産物の処理を人が適切に行わず、無害な物質にまで処理しなかった場合に公害は起きるのです。処理する必要性を判断する人、/処理するための施設設備というインフラストラクチャーの問題と考えることができます。

その意味で、9001規格(品質マネジメントシステム)には不備があります。1.1項(適用範囲一般)の注記1に「製品」という用語を次のように限定して用いる、としているのです。
a)顧客向けに意図された製品、又は顧客に要求された製品
b)製品実現プロセスの結果として生じる、意図したアウトプットすべて

水俣では、アセトアルデヒドという、化学工業にとって有用な化学物質を合成するための原料として役立つ物質の生産に、触媒として使用した硫酸水銀が、製造工程内でメチル水銀に変換されており、これをほぼ未処理のまま廃棄していた、というところから悲劇が始まっていたのです。メチル水銀は上記の概念で考えると、a)には相当しませんし、意図したアウトプットではないのでb)にも相当しません。9001のシステムとして管理対象にならないのです。
もちろん、a)にもb)にも該当しなくても管理対象とすべきなのですが、規格の上からもおろそかになっています。今回の原発災害も同じような根っこを持っている気がします。

話がそれてしまいましたが、化学は人類の役に立つものを生み出してきたのですが、同時に人々を不幸にする副産物を生みだしてきました。こういう状況を経験する中で、環境についてのマネジメントの重要性を認識し、(強引なストーリーですが)品質だけでなく環境を重視した統合マネジメントの方向を目指すようになったと考えられます。

国際化学年をきっかけに、化学産業だけでなく、全ての産業が品質+環境+αのマネジメントを推進するようになることを期待しています。

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