- 2011年4月 6日 16:45
福島原発事故を考える(2)
110328で、福島原発事故を9001規格の面から考えると、7.3.1項「設計開発へのインプット」が最も関連性が強いと書きました。正しくは7.3.2項です。謹んで訂正いたします。
もうしばらく、今回の事故を9001規格の面から考えてみたいと思います。今回のように、監視測定装置が機能せず、必要なデータが入手できないために、現場がどのような状況になっているか不明という中で、今この時間、なにをすることがベストなのかを判断しなければいけないわけで、定常状態だけを想定したマニュアルでは役立ちません。
TS16949の6.3.2項では「ユーティリティの停止、主要設備故障などの事態に備えて、緊急事態対応計画を準備しなければならない。」とあり、9001よりは非常時のことも考えるよう要求しています。これに関連して、新潟中越地震の時にはカーメーカーの対応(部品供給会社への支援)がうまく機能しましたが、今回は自動車の生産を長期間停止せざるをえませんでしたし、日本からの部品が届かないため、海外での生産を縮小したケースも報道されています。対応がむずかしい課題であることは間違いありません。
今回の状況を教訓として、一連の諸活動が終了(定常的な状態に復帰)した段階で、今後に向けた対応を考え直す機会としなければいけません。これまで想定外の状況が現実のものとなったわけですから、リスクマネジメントを含め、マネジメントシステム全体のおさらい(レビュー)が必要です。
9001規格の序文には、次のような表現があります。
「組織環境に関連するリスク、多様なニーズ、固有の目標、提供する製品、用いるプロセス、規模及び組織構造によって、つくりあげるべきシステムは異なる」
QMSを設計し運用する場合に考慮すべき要因を大括りに説明しているわけですが、よく噛みしめる必要がありそうです。ISOのマネジメントシステムに取り組むことがベストでもありませんし、取り組んでいればこんなことにはならなかったというつもりもありませんが、組織としてのマネジメントシステムはあるはずです。今回の事故で明らかになったシステムの一端は、お粗末としか言いようがないものです。結果としてですが、周辺の住民、電力供給を受ける顧客のことに配慮していなかったと言われてもしかたありません。
それにしても、内部電源を復活させるために危険区域に入らざるをえない作業員に対して、放射線の線量を伝えていなかった(コミュニケーション欠如)とか、汚染された水の存在を予想せず(作業環境配慮不足)被曝者が出た、全員には線量計が行き渡っていなかった(必要な資源の不足)ことをなんと説明すればよいのでしょう。マネジメントシステム以前の人権無視と言われてもしかたないのではないでしょうか。地震や津波の発生は天災だが、それに付随して発生した災害は人災であると述べた記事をいくつも見かけます。
9001規格はどのような業態にも適用できる最低限の要求事項を並べたものです。自分たちの業務内容に合わせてしくみをつくり、非常時を想定したマニュアルを作るべきなのです。
東京電力のシステムを責める表現になってしまいましたが、自分自身のシステムを見直し、反省のきっかけにしたいと思います。砂上の楼閣もダメですし、無用の長物もダメです。形式だけ整っているのでなく、役立っている、うまく機能しているシステムの構築は、コンサルタントとしても心しなければいけない課題です。
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