Home > EMSとの両立性  20090428  田中昇次のブログ

EMSとの両立性  20090428  田中昇次のブログ

  • Posted by: 田中 昇次
  • 2009年4月28日 16:00

EMSとの両立性

マネジメントシステムとしての品質(9001)と環境(14001)規格を統合するという話が進んでいます。今回はこれを(現在の)用語の定義から考えてみました。

QMS(品質マネジメントシステム)における定義:JISQ9000:2006、(環境マネジメントシステム)における定義:JISQ14001:2004で比較したのが次の表です。田中が興味を持っている用語しか取り上げていませんがご了承ください。なお、組織、品質、環境等、自明と判断した文字を省略しているケースがあります。


英文
方針 (英文: policy )
  9000定義  トップマネジメントによって正式に表明された、品質に関する組織の全体的な意図及び方向づけ。
 14001定義  トップマネジメントによって正式に表明された、パフォーマンスに関する全体的な意図及び方向づけ。


目的 (英文: objective)
  9000定義  なし
 14001定義  達成を目指して設定する、方針と整合する全般的な到達点。

目標 (英文: target )
  9000定義  なし
 14001定義  目的から導かれ、その目的を達成するために目的に合わせて設定される詳細なパフォーマンスの要求事項で、実施可能な場合に定量化され、組織の(の一部)に適用されるもの。

目標 (英文: objective)
  9000定義  品質に関して、追及し、目指すもの。
 14001定義  なし

継続的改善 (英文: continual improvement)
  9000定義 要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行われる活動。
 14001定義 方針と整合して全体的なパフォーマンスの改善を達成するためにMSを向上させる繰り返しのプロセス。

パフォーマンス (英文: performance)
  9000定義 なし
 14001定義 環境側面についてのその組織のMSの測定可能な結果。

品質 (英文: quality)
  9000定義 本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度。
 14001定義 なし

不適合 (英文: nonconformity )
  9000定義 要求事項を満たしていないこと。
 14001定義 要求事項を満たしていないこと。

是正処置 (英文: corrective action)
  9000定義 検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去するための処置。
 14001定義 検出された不適合の原因を除去するための処置。

予防処置 (英文: preventive action)
  9000定義 起こり得る不適合又はその他の望ましくない起こり得る状況の原因を除去するための処置。
 14001定義 起こり得る不適合の原因を除去するための処置。

修正 (英文: correction)
  9000定義  検出された不適合を除去するための処置。
 14001定義  なし


これをどう解釈するかですが、田中は、QMSとEMSの統合のむづかしさを示している、と解釈しました。用語の定義は、あることがらに対する認識・考え方を明確にしたものですから、「定義が違う」=「考え方が違う」ことを意味しています。定義が一致しなければ議論は噛み合いませんし、意味をなしません。

一番違っているのは「パフォーマンス」だと思います。
9000では定義をしていません。
9004:2000では次のように解説しています。『JISQ9004はパフォーマンスの向上の指針であるために、多くの場面で"performance"は、種々の意味をこめた使い方がされており、"パフォーマンス"とカタカナにした。また、製品については"出来栄え"とした。』  
9001:2008では次のように解説しています。『JISQ9001では文意に沿って訳した方が分かりやすいこと、更にISOQ9001における"performance"は、成果、結果などだけでなくその過程も重要であるとの認識から、品質マネジメントシステム、プロセス及び組織については"成果を含む実施状況"又は"実施状況"と訳した。また、製品については"性能"という訳語を当てている。』すなわち、製品を除くと、実施状況のほうを重視しているのです。
14001では、表にあるように『マネジメントシステムの測定可能な結果。』ですから『過程』については考慮していません。環境マネジメントシステムにおいては環境側面が重要な要素であることは疑う余地がなく、環境側面には「活動」の要素を含んでいるのですが。

「成果、結果などだけでなくその過程も重要であると考えるQMS」と「結果-しかも測定可能にこだわる、結果だけに焦点を合わせたEMS」の統合が簡単にできるとは思えません。二つのマネジメントシステムを同時に考える人たちだけが議論する場合は問題なさそうですが、どちらか一方のシステムには経験豊富だが、もう一方はついでに知っている程度(表現が多少不適切かもしれませんがニュアンスを汲み取ってください)の人たちが議論するでしょうから、なかなか意見の一致に至らないでしょう。


方針も似たような状況です。EMSはパフォーマンス(結果・アウトプット)を考えています。QMSは、品質、つまり「特性の集まりが、要求事項を満たす程度」を考えているので、サービス業の場合には実施事項(サービスという行為)に関する要求事項を含んでいます。サービス業の場合、サービスを実施すること自体が製品である場合があるからです。


もうひとつは是正/予防処置です。除去の対象が、QMSのほうが若干広めになっています。


統合に悲観的な主張となってしまいましたが、9001の不足分(廃棄物のような、意図しない製品を除外していること)をEMSが補完していることを考えると、是非統合してほしいというのが本心であることを、最後になってしまいましたが付け加えさせていただきます。さらに付け加えるなら、当初の統合時期は2012年としていました。この年まではマネジメントシステムのアドバイザーをしていようと目論んでいたので、統合時期が不確定、統合の可能性も高いとは言えない状況は残念です。

9001の2008年版は、これまで以上に14001との両立性を高めたと書いてありますが、本質的な部分は高まっていないのではないでしょうか。

Comments:0

Comment Form

Trackbacks:0

TrackBack URL for this entry
http://www.rascentgroup.com/mtos/mt-tb.cgi/44
Listed below are links to weblogs that reference
EMSとの両立性  20090428  田中昇次のブログ from Consultant's Eye QMS

Home > EMSとの両立性  20090428  田中昇次のブログ

Search
Links
Feeds

Return to page top