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道路交通安全マネジメントシステムによって重大事故を未然に防ぐ

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2012年8月21日 18:20
  • 一般 | 経営

 関越道での観光バス壁面衝突により7名の方々がお亡くなりになったことは大変痛ましい事故であった。この事故に限らずその後も重大死傷事故が幾つも発生している。
世界的にも死亡事故では、交通事故がトップを占めており交通事故の撲滅は喫緊の課題となっている。
 このような状況を打開し、死亡事故を削減していくための仕組みとしてISOでは「道路交通安全マネジメントシステムISO 39001」を制定し、マネジメントシステムを整備運用していくことによって、事故を低減していくことを目指している。
ISO 39001マネジメントシステムはISO9001等のマネジメントシステム規格と同じく、認証規格として発行される予定であり、第三者認証を受ける事によって構築されたシステムの認証、運用状況の審査がなされ、継続的改善によって事故を防止あるいは低減して行くことが期待されている。
 本規格の適用範囲は広く、運輸業に限らず、一般の事業者でも一定の車両を保有、運行している組織に適用可能な仕組みとなっている。一度、重大事故を起こしてしまうと、単に賠償問題では済まず、被害者との交渉による労力、社会的信用失墜、財務負担等により組織基盤の毀損に結び付く可能性が大であり、そのような事態を少しでも低減するにあたって、ISO 39001の施行は大きく期待できるものである。
 近年では、品質マネジメントシステム規格の発行から環境や情報、労働安全等様々な分野についてISO規格が発行されており、何処の組織も食傷気味と云えなくはないが、組織の存亡を左右しかねない、リスクをどのようにコントロールすべきかを総合的に整備・運用するにはISOマネジメントシステムはベストのシステムであると確信している。
 事業上、物流や営業等で頻繁に車を使用する事業者の方々にとっては、一度は検討しても損はない規格であろう。

リスクコントロール

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2012年1月 6日 17:40
  • 一般 | 経営

今やリスクコントロール手法が様々の業界で導入されている。
例えば、金融業界における金融庁が金融機関を検査する際の基準である「金融検査マニュアル」の統合的リスク管理態勢や、上場会社に求められる内部統制制度の整備・運用の要求等はリスク管理の代表的なものである。
また、世界に目を向けると「ISO31000:リスクマネジメントシステム構築のための指針」が、リスク管理を行う組織のためのガイドラインとして使用されることを意図し発行されている。これらは、何れも個々の課題に対してリスク管理をどのように行うかというものではなく、あくまでも総合的にリスクを認識し、管理していこうとするものである。
しかし筆者が思うに、ISOマネジメントシステムのアドバイザーとして数十年に亘る経験からは、マネジメントシステムでは補いきれないリスクがあると認識せざるを得ない。
今回のオリンパスの損失隠しの偽装取引や、ギリシャ、イタリア等欧州の幾つかの国における返済可能限度を超える国債を発行し続けた結果デフォルトの危機に直面する等は、残念ながらリスクマネジメントシステムをいくら整備したとしても、リスク回避できるものとはならないであろう。最高経営責任者が責任をとらず放漫経営を続ける、あるいはある意図をもって不正行為を行う場合には、マネジメントシステムでは防ぎきれないものと思われる。それが証拠に、オリンパスは事件が表面化すると同時に株価がピーク時比85%近くも急落し、イタリア、ギリシャでは国債の表面金利が7%を超える事態に追い込まれた。
要は、リスク管理システムで救えるのは、日常的あるいは蓋然的に想定できるリスクに対してであり、まさに想定外のリスクについては防御出来るようになっていない。
組織の根幹を構成する人の「業」から引き起こされるリスク部分は、「倫理とか」、「組織文化とか」、「組織は何のためにあるのか」といったような高次元な問題であり、主義や主張に係らず普遍的なものであるのではないかと思われる。
幸いにしてというか不幸にしてというか、日本は巨額な国債発行残と、国家収入に占める税収割合が50%近いレベルを近年推移してきており、これらの解決を先送り出来ない状況に追い込まれている。このことは誰しもが理解していることながら税制改革や、社会保障改革といった個別具体的の対策になるとずっと先送りしてきた。
明らかに、極めて巨大なリスクが眼前に迫っているのに、それを政治家も国民もみないようにしてきた。これはら、リスク管理といった手法の問題ではなく、まさに人としての「倫理」とか、国としての「文化」の問題であろう。
ギリシャやイタリアのように追い込まれる前に、これからの若い人たちが希望を持って生きていけるようになるためにも、巨大なリスクを自ら解消していくことが直ぐにも求められるのであろう。昨年末のEUの混乱をみた今こそ改革のチャンスであり、政治家には不退転の志をもって改革を成し遂げて欲しいものである。
新年にあたっての所感でした。

環境技術百家争鳴 2011.5.20

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2011年5月20日 11:10
  • 環境 | 経営

東関東大地震を発端として福島原子力発電の停止、その後の浜岡原子力発電の予防的停止に発展することによって、関東のみならず中部地域まで電力不足が叫ばれる中、様々な電力に関係する技術が注目されている。
国内では環境に優れたエネルギー技術が生まれてきていたが、原子力発電のように一基で大量の電力を生み出せないため活用が限られていた。
高性能な太陽光発電、太陽熱発電、電気を貯めて必要な時間帯に使用できる高性能蓄電池、小型風力発電、洋上風力発電、小型水力発電、地熱発電等様々な自然エネルギー発電が花開こうとしている。
震災前までの電力供給体制は大規模発電によって電力をくまなく、必要な時に必要な分だけ水道のように使用できるという点からは優れたシステムであり電力安定が求められることから、自然エネルギーによる発電は積極的には普及しなかった。
原子力発電所が少なくとも一か所は使用できなくなったことにより、電力不足が生まれた現在の環境は、天が与えてくれた千載一遇のチャンスであろう。
これらの各種エネルギーを大規模に採用するには、発電と送電の分離や、安定した電力供給といった点での技術革新が必要となることは事実であるが、ここ一二年の復興の時機を逃したら、次のチャンスはまた一世紀以上待たなければならなくなってくる。
一時的な電力不足を補うためには火力発電に頼らざる得ないものの、CO2の排出はむしろ増え続けるので何時までも緊急避難的に使用することは地球環境の保全の点からも許されるものではない。長期間にわたって化石燃料による発電が続けば、国際的にも今回の汚染水の海水放出に伴う非難と同種の非難を受けることになりかねないであろう。
政治家が、この国難にあって新たな技術を花開かせるために英断をもって方針を決めることを願うのみである。

危機と危機管理 2011.3.25

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2011年3月25日 16:08
  • 情報 | 経営

 東北関東大地震の影響により福島第1原子力発電所での原子炉の停止が健全に行われない事態が続いている。自衛隊、消防の困難かつ危険な消火活動、冷却活動の結果、緊急対応でなんとかこれ以上の悪化を防いでいる状況である。
 
 地震、その後の津波により、原子炉機器破壊、あるいは水をかぶり使用ができない状況が通電後次々と明らかになって、電力が通っものの冷却装置を動かせない状態が続いている。また、昨日は復旧作業にあたっている東京電力の協力会社の社員が、放射能を含んだ水にしたり、大きな被ばくを負う事故が発生している。
 あるいは、原子炉の冷却を緊急避難的に行うため、大量の海水の放射や、炉内圧力を下げるための炉内の気体の外部放出が行われている結果、放射線が大気あるいは海に流れ込み、水道や、海水に規制値を超える放射線が混入し、摂取制限が発表されるなど、首都圏を中心に市民の健康面でも大きな問題となりつつある。
 
 これらは、結果の話であり、原因は原子力発電装置に異常を生じた時にどのような対応をすべきか、危機管理の甘さの問題である。これらが、想定外の地震、津波ということで片付けられている気がしてならない。
 
 今回の、事故は常に問題となる初動段階での判断の失敗であると同時に、結果として、自衛隊、消防隊が前面立った活動まで踏み込まざる得ない事態となったことは、原子力のような重大事故が生じた時に、初期段階では一民間企業の問題として扱っている制度の欠陥が大問題と言わざる得ない。
 
 民間では、事業の継続を損なわないために、事業継続管理システムの導入が進んでいるが、民間の問題ととらえずに、公的機関は積極的に事業継続管理を進める必要があるものと思われる。

 一日も早い、地震被災地の方々の復興と、原子炉の安定停止を願う次第である。


 

2010.3.7 国際競争力向上に官民上げて立ち上げ始まる

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2010年3月 7日 20:36
  • 一般 | 経営

2月、3月と政府が主導する形で国際競争力を確保するための政策を立ち上げた。
今まで日本企業は、技術的に優れたものを持っていながら、国がセールスに殆ど無関心であったため、折角優れた技術を有していながら、国際競争に競い負けしている事例が近年多数みられた。
ベトナムの原子力発電所建設でのロシア政府の強力なサポートにより、ロシア企業に惨敗、アブダビでは韓国に敗退、鉄道でも新幹線を有していながら国債入札に競い負けといった事象が続いていた。
この度、国が中心となって海外原発受注窓口となる新会社を原発各社と共同出資で設立し、ベトナムの第二原発受注に向かって動き出す組織を立ち上げた。
また、国際的にはドイツと日本にしかない重粒子線がん治療法をアラブ諸国や、中国、フランス等に順次協定を結んで技術供与することが表明された。
また、グリッド電力管理装置分野においても、国際標準化を提案していくとのことである。いままで、日本の技術はガラパゴスと言われており、国内での激しい競争に目を奪われ、海外に目を向けた戦略がなさ過ぎると言われ続けてきた。
今回の政府発表は、旧政党の時代には最近例を見なかったことであり、今後多くの分野で、今回のような政策を立ち上げて欲しいと同時に、地球温暖化対策上も、原子力発電は最も有望といわれており、より安全な原子力発電装置と、運転管理を確立して、温暖化防止に役立って欲しいと願うものてある。

2010.2.4 国際規格化に向けた官民の連携始まる

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2010年2月 4日 13:45
  • 一般 | 経営

TS3J0140.jpgのサムネール画像 先週の27日に日本経済新聞の朝刊に、経済産業省が日本企業の持つ技術の国際規格化を後押しするとの記事が掲載された。分野としては次世代送電網「スマートグリッド」分野である。太陽光発電関連などで送電網構築に不可欠な26項目の技術を国際機関に提案する方向とのこと。
 地球温暖化対策のためのCO2大幅削減は急務であり、地球の持続的発展の意味からも、自然エネルギーによる発電への移行が世界的な規模で計画されている。しかしながら太陽光、太陽熱、風力等自然を相手とした発電は非常に不安定であり、発電量が一定でない。かつ、太陽光発電、太陽熱発電の場合は、夜間は発電が出来ない。そのため、化石燃料や、原子力で発電された安定的な発電と自然エネルギーで発電した電力をどのように組み合わせて安定供給出来るようにするかが大きな課題となっている。
 そこで注目を浴びているのが「スマートグリッド」である。高度な情報技術を活用して、発電した電気を家庭や地域で調整する技術である。
 日本では、自然エネルギーの活用に関して、実用化された高度な技術をたくさん有している。例えば、ソーラー発電、風力発電機、太陽熱発電機等の発電群、ニッカド電池、リチウム電池、水素電池の電池、NAS電他等の蓄電池群、急速バッテリーチャージャー機、高度なIT技術などである。
 特に期待されているのが、ハイブリッドや、EVカーの普及によって、家庭の車の電池が自然エネルギーの蓄電機として使用される機能と技術にである。
 しかしながら、旧来は日本の省エネ技術は単発の製品で見れば圧倒的に強い競争力を有していながら、国際規格化に対して挑戦的で無かったこともあり、これらを世界市場で勝負するとなると国際規格化を取得され技術に負けてしまうといったことは枚挙にない。
 今回、経産省が官庁としてこれらを積極的に推進していく活動をするとったことは斬新な取り組みであり、日本経済の活性化と新たな産業育成という意味においても喜ばしい限りである。
日本の優秀な技術の国際化を多方面に亘り推進することが望まれるものである。

2010.01.17 直近の報道より感じた国際規格化について

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2010年1月17日 17:30
  • 経営

 年明けより、急に日本企業および日本政府による国際規格化の報道が増えたように思える。日本の物づくりは定評があるものの、世界を相手とした製品の開発販売は一歩も二歩も海外勢に遅れを取ってきた。
 それというのも、以前のブログに記載したが、グローバル化した社会で製品や商品を売っていくとすると、国際規格として認定されているかどうかが競争力の分かれ目になってくる。日本では、言葉の壁もあり国内に目を向けた製品作りとなりがちであり、東洋のガラパゴスと揶揄され続けてきた。
 ようやく、そのことに目覚め、日本の持つ物づくりを当初から国際規格の取得を目標として進めていこうとの方針が出来てきたようである。
 温暖化ガス削減の重要な要素となる自然エネルギーによって発電した電力を効率的に運用していくためのスマートグリッド技術の国際規格化を官民上げて進めていくことや、もっと卑近な例では、トヨタが世界市場を見据えた開発をアメリカからインドに移し、インドで開発・製造した車体を世界中に販売していく戦略に変更するなど事業面での変化も現れてきている。
 昨年のことであるが、液晶テレビでLEDをバックライトに使用したサムスンのテレビが旧来の液晶テレビとの差別化商品として世界的にヒットした。しかし、LEDを使用した液晶テレビは数年前にソニーが開発に成功し、国内販売したものの売り上げがそれほど伸びずに販売を中止したものである。これらは、グローバル市場を対象とした視点をもって取り組むのか、ナショナルマーケットを対象とした視点で取り組むのかの差異ではないだろうか。
 国内の人口の減少、急速な高齢化が進む中で、日本企業のもつ物づくりの力を生かすには、世界で戦えうための国際規格化は避けて通れない。それこそが、今の閉塞した経済環境を打破できるキーワードとなるのでは思う次第である。

2010.1.4 新年明けましておめでとうございます

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2010年1月 4日 14:31
  • 環境 | 経営

明けましておめでとうこざいます。
昨年は年末からブログの更新ができずにすいませんでした。
一度、間を開けてしまうと中々再開のきっかけが付かず、ずるずると間隔があいてしまいました。
年が改まり、気持ちも引き締めたところで再開していきたい思います。
最近は、ブログから"ツイッタ"とやらが流行らしく、今朝の新聞にも鳩山首相のツイッタの記事が掲載されていました。日本語では"つぶやき"という意味らしく、140文字以内でタイムリーに感じたことを発信できるところに新鮮味があるとのこと。次々に新しいIT技術が生まれてきて、それらを使っていくことは大変なことだと思うこの頃です。
久々に国際規格で明るい話題と云えば、ハイブリッド車の国際規格化が国連で進んでおり、トヨタ、ホンダのハイブリッドの安全規格が国際規格として承認され、ハイブリッド車の国際規格として標準として採用される方向で進んでいるとの報道が昨年末ありました。
日本の閉塞感を打破するにもガラパゴス状態から国際市場に通用する国際規格化へのリードは好ましいことです。


2009.11.1 新型インフルエンザと事業継続管理

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年11月 1日 21:12
  • 一般 | 経営

遂に、先週一週間で新型インフルエンザ発症者が100万人を超えた。
100万人というというまでもない事だが、1週間で全国民の約1%に相当する羅患数である。
先々週が約80万人ということから、一ヶ月では4%相当になる。
 現在発症数の最も多い組織体は学校とのことで、会社や、行政機関等では集団感染には至っていないが、子供がかかれば親にもうつる可能性は極めて大きい。
 ようやく、11月になってワクチンの供給が始まり、医療機関関係者や優先摂取者から予防摂取が始まったものの、供給量に制約があり、一般成人にまで回るのは暫くかかることから、流行の峠を越してしまう可能性が高いといわれている。
 そうなると、一般の会社でも従業員が新型インフルエンザにかかり、突然出社できない事態となり、業務停止に陥る可能性がある。
 大手企業では、既に事業継続管理や、危機管理で新型インフルエンザに対する事業管理は計画されているものの、中堅・中小企業では殆ど計画されていないようである。
昨年の世界金融の崩壊からまだ実体経済は立ち直ってない環境下にあり、仕事の量もピーク時の半分程度までしか回復していない業種は多い。
 このような経済環境下で、仮に、協力業者である会社の従業員がインフルエンザで欠勤となり、提供すべき製品や、サービスが停止した場合には、取引自体が危機にさらされる可能性が大きくなる。
 経営者は、新型インフルエンザが蔓延期となった環境下で、顧客に対し業務中断を生じさせないよう、社内でインフルエンザが発症した場合の業務態勢を最低限決めておくことは緊急な課題であろう。

2009.10.18 21世紀型産業開花

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年10月18日 16:41
  • 経営

 TS3J0113.jpg最近の報道で、未来に希望の持てる新しい技術が報道されていた。
現在の日本は、サブプライムの後遺症から抜けきれず、最近では消費材が下がり続けるデフレ傾向が顕著に現れるなど、決して明るい状況下にあると言い切れない。しかし、昨年来の世界的な景気刺激策により、大幅な下ぶれは今年の3月ごろを境に立ち直ってきており、株価も3月から5割ほど戻すなど回復期にあるようだ。
 現在、日本はこの9月に民主党政権に移り、今のところは国会が開催されてないことから新しい政策も実行できない状況下にあるものの、鳩山首相が世界に向けて発信した温暖ガス25%削減は、産業界では賛否が2分化されている。しかし、地球環境は19世紀以降の化石燃料による排出ガス増、人口の爆発的膨張による緑の破壊、食糧増産による土地の荒廃等が確実に進んだことは事実である。
 一方で、21世紀に入り、過去200年間の技術ベースとは異なる技術が花を開きつつある。日本が得意とするミクロの世界である。
 例えは、カーボンナノチューブによる大容量キャパシタ蓄電、PS細胞から再生医療、カプセル型内視鏡、リチウム電池、水素発電、太陽光発電など、様々微細加工技術の延長線上に花形商品が花を開く段階に入っている。
 これらの技術を初めとする高度な技術と、欧米には少ないロボットとの共同を通じて、微細技術を突破口に広く世界の環境改善に取り組むことが出れば、高齢化による国力の衰退や、就労者の増加など、現在抱えている課題の大半は解決できるのではないだろうか。

2009.10.11 秋本番

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年10月11日 16:09
  • 一般 | 経営

TS3J0111.jpg 先週末の台風18号は、3年ぶりの本州上陸となり午前中いっぱい首都圏では交通網が寸断された。私自身、午前中から業務が入っていたが自宅から一切の移動手段が使えず、午後に約束を延期してもらわざる得ない事態となった。
 今回の台風は、風、雨共に激しい大型台風と報道されていたことから、朝事務所にいけなくなることを予測し、念のために必要な書類を前日の夜に持ち帰っていたことから業務的には事無きを得た。
 昔は、台風直撃の報道があると、都内のホテルはビジネスマンの予約でほぼ満室となるとよくニュースになったものである。これなどは、今でいう危機管理であろう。
 最近は、台風以外にも、短時間のスコール的集中豪雨による水害や、竜巻による被害、新型インフルエンザのまん延による事業中断など、いろいろな驚異にさらされている。
 しかし、今日は、快晴、「天高く馬肥える秋」日々の多忙さから解放されて、稔りの秋とうまい酒で夜を満喫することにしよう。

2009.10.4 温暖化ガス削減と環境対応車開発

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年10月 4日 20:02
  • 環境 | 経営

昨日トヨタが表明したところによると、今後数年でハイブリッドから、EV車、燃料電池車等環境対応車の開発と量産に全力を挙げるとの方針発表があった。

鳩山首相の温暖化ガス25%削減を受けて、大手の企業が本格的に温暖化対策戦略を表明したことは注目に値する。まだまだ、産業界では温暖化ガス削減25%に対して後ろ向き発言が続いているなかで、日本を代表するトヨタの発言が、他の組織に良い効果を生むことを期待したい。

以前のブログでも記載したが、現在の主要な商品で発明後今日まで一度も基本的な構造が革新されなかったものは車のみである。そのような意味からも車が生まれて100年という時間軸の中で、内燃機エンジンから化石燃料を使用しない革新的な車の構造に大きく変化することは車産業のみならず、電機産業、社会的インフラ産業など幅広い産業構造の変革がなされるものと考えられる。

日本では、環境対応のための基本的技術は相当なレベルに達しており、環境技術面で世界の先端を走ることが、金融危機や、物づくり大国として中国との競争力低下など現在の閉塞状態に陥っている日本経済の再浮上、産業面での国際競争力向上のKeyになるものと確信している。

まずはトヨタに、世界一の環境車メーカとしての地位を確立するよう頑張って欲しいものである。

2009.9.26 環境保全と産業振興

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年9月27日 14:40
  • 経営

TS3J0102.jpg

 最近、脚光を浴びている製品として原子力発電と高速鉄道がある。原子力発電に関しては日本はアメリカの原子力発電装置の会社を買収し、日立製作所と東芝、三菱重工の三社がこの分野を押さえている。しかし、欧州に目を向ければフランスの「アレバ」が圧倒的に強い。最もアレバはフランス政府が90%の資本を有しており、実質国有企業である。そのためか、海外への原子炉売り込みにはサルコジ大統領自らが、積極的にトップセールスをアジアで手掛けている。
 一方、鉄道はどうかというと、温暖化ガスの削減の施策の一つとして、自動車よりも大量に人を運べる長距離鉄道がいま注目され、幾つかの国で導入が進んでいる。
 直近では、韓国、中国、台湾がすでに高速走行鉄道が敷設され、日本の新幹線技術も活用されている。また、現在、アメリカ、ベトナム、ブラジルでの導入が計画されている。
 しかし、この高速走行鉄道の分野でも、フランスはTGVを前面にした政府、民間一体となった売り込みをしており、日本の民間企業のみによる国際入札では、劣性下にあるやに聞こえてくる。
 いずれも、日本で蓄積された原子力技術や、新幹線技術は、温暖化対策のための重要なテクノロジーであり、日本政府は後進国の温暖化対策支援を通して、産業の育成と地球環境の保全の両面を積極的に進めていくべきであろう。
 今回、鳩山首相が2020年に1990年比25%の温暖ガス削減を国連でコミットメントし、世界高く評価されたことは前回のブログに書いた。これから国内でそれらの実行プランを作成し、各業界、個人で削減に取り組むにしても、節約だけでは達成できる量ではなく、新しい省エネ技術の導入は不可避であろう。そこでは、友愛と産業育成は相反するものではなく、産学官一体となった取り組みがあって初めて達成できる道であろう。

2009.9.21 温暖化ガス排出削減と国際競争力 N02

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年9月21日 20:20
  • 環境 | 経営

TS3J0093.jpg  鳩山首相が初外交として、今日からアメリカに旅立った。
欧米首脳との会合、国連での演説、温暖ガス削減会議等訪米中は行事が目白押しである。
 その中でも、世界で注目されているのは今般民主党が掲げた温暖ガス1990年比で25%削減政策である。既に1990年比では8%増となっており、増加分を考慮すると1990年比で33%削減という、途方もないチャレンジである。
 欧州全域では20%から30%とほぼ日本と同じような削減幅を目標にあげているが、東欧を始め殆ど温暖化対策を採ってきていない国々を含めての話であり、日本の場合には既に高度経済以降大幅な省エネや、排出ガス削減を実施してきており、現状から後約10年で33%削減を達成するとなると、国を挙げての総力戦となるのではなかろうか。
 一方で、前回のブログでも書いたように省エネ技術や、化石燃料からの転換技術、輸送手段としての鉄道技術など、日本が世界をリードできる民間技術は豊富にあるものの、残念ながら国際規格化の戦略に欠けているため、世界標準に乗り遅れている。
 つい、最近でもある国の高速鉄道の国際入札に参加した国内の車両メーカがISOの鉄道規格に準拠していないことから、入札にあたって、応札資料を作成するにあたり、国際規格が求める基準に合致させるために、膨大な追加実験と資料作りに翻弄されたと云われていた。国内基準と国際基準のダブルスタンダード化の弊害であり、今後製品、商品のグローバルマーケットを狙う企業においては、国際基準化が不可避であろう。
 日本では環境分野で多くの先端技術を有しており、これらを幅広く世界に普及させるためにも、新たに政権与党となった民主党には、産学官一体となった国際規格化への取り組みを強く望みたいものである。

2009.08.16 企業の監査費用急上昇と内部統制

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年8月16日 21:00
  • 一般 | 経営

TS3J0088.jpg 先週12日に日本経済新聞の夕刊に2009年3月期に支払った上場会社の監査報酬が前の期に比較して32%上昇したとの記事が掲載された。監査報酬の上昇要因は、アメリカで法制化された内部統制(SOXと呼ばれている)がヨーロッパーに波及し、その後日本でも2008年4月1日から適用となった結果、今期は始めてのSOX監査も会計監査にあわせて行うこととなった結果である。
 内部統制の原点はアメリカのCOSOといわれる基準を元に構成されていて、日本でもほぼ同じ構成となっている。アメリカでの上場会社の相次ぐ不正行為により、株式市場が混乱し、公表財務諸表の適切性を普段から内部統制制度を整備運用することで確保しようとしたものである。
 今回の3月期の内部統制監査結果重要な欠陥が生じた企業は全体の2.1%とアメリカで導入された時よりも大幅に減少している。既にグローバル化して海外でも上場している企業は欧米のSOXを経験していたことや、日本の国民性から決まったことは着実に実行すると云った結果であると推定できる。
 現在は経済不況の真っ只中であり、売り上げも昨年対比で50%減というような厳しい環境下にあるものの、資本市場から資金を調達しているパブリックカンパニーにおいて、社内の内部統制コスト並びに外部監査コストを確かにUPしたものの、内部統制監査結果の98%近くの企業で重要な欠陥がなかったことは、投資家からの信頼確保に大きく寄与するものではないだろうか。
 むしろ、これからは今回整備した内部統制を財務目的を当然のこととして、事業の効率性といった視点から整備した統制のシステムをブラシアップし、積極的に活用することが求めらることでしょう。

2009.07.05 CCC: China Compulsory Certification

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年7月 5日 14:23
  • 一般 | 経営

DSCF0359.JPG  国内では経済産業省が音頭を取って、日本の製品の国際規格化を進めようとしているが、言葉や文化の壁があり大きな成果が上がっていない現実がある。国際規格化というとISOであるが、国際規格化を果たすためには、英語で書類を作成し、専門委員会で議論を重ね、規格化が進む。時には、会議の場ではなく、昼食時や、アフターディナーの場での委員の話し合いが決定に重要な影響を及ぼす場合が多いと云われてもいる。
 そのような中で、今回中国が中国国内で販売するIT製品に関して、中国国内規格である、CCC: China Compulsory Certification (CCC認証)を2010年5月から導入することを今年4月に発表した。
 日本は、IT製品に関するソースコードも中国のCCC認証機関に提出されることから、技術情報の流出懸念があるとして大反対しており、日本政府も撤回を求めている。 しかし、CCCによる認証制度は2003年8月1日より既に電気製品を初め13品目で始められている制度である。
  中国国内で消費が伸び、中国が魅力ある市場となった今、バイニングパワーとして購入品の安全性確保を規格によって担保しようとする国家戦略をとることは想像に難くない。
 前例は既にEUにおいて、EUで製品を売るにはCEマークの取得が義務付けられている事例がある。
 日本の場合には、戦後一貫して輸出で稼いでいることから、輸出相手の規制をクリアーし、優れた競争力を持つ商品の開発に心血を注いできた歴史がある。むしろ、この際、隣国である中国の今回の動きに合わせてアジア版の製品認証規格化を主導的に進め、これからの規格競争に地域単位で打ち勝っていくような戦略転換が望まれるものである。

2009.6.28 QMSを効果的に経営に活用するにはマインドチェンジ重要

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年6月28日 16:52
  • 品質 | 経営

TS3J0073.jpg  「6月7日の品質システムを生かして使うには」の個別テーマです。 世界中で普及したISO9001ですが、ここ近年世界的に登録数が伸び悩んでおり、日本においてはここ数年純減しています。
 一度、規格や基準が作られると環境が変わっても変更されないといったことは少なくない中で、ISOのマネジメントシステムは、専門の委員が真剣に検討し、環境変化に対応しつつより良いシステムづくりを目指し、原則として5年に一度社会情勢に合わせて、改訂される画期的なシステムであるにも関わらず、登録数が減少している原因は何なのでしょうか。
 長年にわたりISOマネジメントシステムの構築に携わってきた者の一人として、残念でたまりません。一方私自身経営者という立場であり、独善的に私見を述べさせてもらうと、現在大方のQMSが経営者の考えているマネジメントシステムのありようと大きくズレてしまっているといったことに原因があるのではと思っています。
 そもそも、ISOマネジメントシステムは2000年版で大きく規格概念が変わったにもかかわらず、以前として品質保証に関するシステムといった誤解を持たれておられる経営者が多いのではと思っています。そのためか、QMSの大半の活動を管理責任者に任せきりとなり、形式的なマネジメントレビューに係る程度で審査に臨んでいるような状況に陥ってしまっているのではないでしょうか。こんな状態ではISOの認証を得ていても、経営に活かすといった気持ちには到底なれないでしょう。
 経済状況が著しく悪い中で、多くの経営者の方々はどのようして経営を維持し、発展していくか七転八倒されている状況にあるのではないでしょうか。まさに、方針が問われているのです。経営戦略如何によって経営方針も変わります。経営戦略が変われば、また、提供する製品やサービスも変わるはずです。例えば、トヨタや、ホンダ自動車を始め多くの車体メーカーは環境対応車の開発・発売に注力する戦略をとって世界市場での生き残りに社運をかけようしています。そうすると、部品メーカーにおいても、従来のエンジン自動車に必要な部品から、電池やモータ関連への技術シフトを進めて行かなければ生き残れなくなります。
 ISOマネジメントシステムはこのような戦略を転換せざる得ない事態においても、経営戦略に基づき品質方針を明確にし、目標を建てさせ、実行させていくようプロセスを設計・運用することによって経営者の意思をシステムに落とし込むことが可能となります。経営戦略実現のための手法としてQMSを活用する。
 まずは、経営者の皆さんがマネジメントレビューで報告を受けるといった係りから一歩、あるいは数歩踏みだしてトップダウンでQMSを運用されることを実践してみては如何でしょうか。
 このような時代だからこそ、マインドチェンジが必要です。

2009.6.7 品質マネジメントシステムを経営に活かして使うには

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年6月 5日 10:31
  • 品質 | 経営

TS3J0069.jpg ISO9001品質マネジメントシステムは日本国内でJAB登録をしている企業数が40,000組織を超えるほどにまでなってきている。但し、ここ近年登録数は経済状況の悪化という状況もあり減少傾向にある。
 しかし、品質マネジメントシステムが目的としている、製品やサービスの提供といった事業の基本となる部分の信頼性を担保するシステムであることを前提とすれば、このような厳しい時代だらこそ、しっかりとした品質管理体制を確立、維持し、顧客の信頼を増していくチャンスであると考えるのは私一人であろうか。
 そのようになっていないのは、経営者にとって国際的なマネジメントシステムを導入していながら、それを経営に役立てきれていないところに最大の問題があるのではと考えられないだろうか。
これを機会に、経営に活用するためのマネジメントシステム化へのチャレンジをしてみては如何ですか。まずは、自社のシステムを見直す上での検証の切り口として以下の項目をチェックしてみてください。
1. 会社が目指すビジョンを実現するための品質方針が明確になっているか。
2. 短期の経営戦略と品質システムが対象とする範囲は一致しているか。
3. 品質システムは少なくとも3年に一度は大幅に改訂し、経営の変化に対応できているか。
4. 従業員の力量と、人事考課、教育システムはリンクしており従業員の意欲向上や、レベルの向上に結びつく仕組みとなっているか。
5. 現場のプロセスは普段に改善する仕組みが品質マネジメントシステムの中に組み込まれているか。
6. マネジメントレビューは形式的なものでなく、適切な間隔で実施され、そこで報告され、決定する事項は現場の運営に生かされているか。

このような経済環境だからこそ、審査機関向けのISOシステムではなく、自社の経営のためのISOに大きく舵を切るチャンスではないでしょうか。

2009.5.31 マネジメントシステムに関する一考察

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年5月31日 19:50
  • 品質 | 経営

TS3J0062.jpg  今日は、我々のサービスの一つであるISOマネジメントシステムについて、私自身経営トップとして感じている点について、触れてみたいと思います。
 QMS認証を取得している組織が、継続的に不良を出したり、また法令違反をしたりと、不祥事が続いていることは皆様も知っての通りです。また、QMSの認証登録数も絶対数が2008年の初頭から減り続けており、曲がり角に来ているのとの話も巷では聞こえてきます。
 我々は、これらの仕組みの構築・運用を主に支援してきており、このような声を聞くと心が痛みます。今回の100年に一度の不況という環境下だから生じたものではなく、サブプライム問題が発生する以前から、この傾向は生じています。
 そうすると、原因は別のところにある訳で、私としてはこのマネジメントシステムの中に改善プロセスはあるものの、ここでは個別のプロセス改善などは旧来重視されておらず、システムの改善面にのみ重きが置かれてきたことに大きな原因があるのではと感じています。
 日本国内では、昔からQC活動が華やかで現場改善活動は具体的な改善効果が経営に役立ち、組織的にはQCサークル活動を通して組織風土の醸成にも役立ってきていました。  
しかし、ISOの規格に基づく品質システムの中には、現場の改善行為やQC活動は必要なものではなく、いつしか忘れされてしまった感があります。
 経営者の方々においても、QMSを動かすことによって、QC活動同様に経営成果が目に見えて現れてくれば、取組と維持も違った形となったのではと思う次第であります。
 ISOのマネジメントシステムは世界共通の規格であるものの、経営上の使い方はもっと自由であり、QMSの中に、経営改善のプロセスや、改善活動プロセスなど、経営改善のためのプロセスを追加し、経営成果に直接結び付けることにチャレンジされることを是非お勧めしたいものです。

2009.05.24 ブレークスルー

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年5月24日 18:42
  • 一般 | 経営

TS3J0070.jpg 最近のアメリカのビックスリーがいずれも経営不振に陥り、既にクライスラーが4月末で経営破綻しチャプター11を申請する事態となり、最大手であるGMもこの5月末において破綻か、或いは債権者の巨額債務免除により存続できるか最終章に差し掛かっている。
 世界初の量産車を開発販売したフォードは今の時点では単独で生き残れると言われているが、アメリカの産業といえば自動車といわれるほどの産業がなぜ凋落したのか。戦略のミスとか、オイルの高騰による消費者の変化の読み違いとか、労使契約に伴う高コストで競争力を失ったとか、いろいろといわれているが果たしてそうであろうか。
 私は、自動車は開発発売されてから、今日まで革新(ブレークスルー)がなかったことに最大の原因があったのでは思っている者の一人である。
 今、多くの人たちが恩恵を受けている代表的な製品や商品について、初めて世に出た年代と、その後革新的技術により新たな製品へと変貌したものを整理してみた。
 今われわれが使用しているものは産業革命当時の18世紀後半に開発され、その後半世紀程度の時を経て、新技術の導入によりあらたな物に進化している。
 ところが、自動車に関してはフォードがT型を発売して以降、いまだに主流は燃料の種類こそ違いがあるものの内燃機エンジンのみといった状況下にあることに愕然とした。
 改良だけでは生き残れないという傍証にならないであろうか。

           一世代                     二世代
明かり   白熱灯       :1879年   ⇒    蛍光灯     1938年
発 電   火力発電     :1882年   ⇒    原子力発電  1956年
自動車   内燃機エンジン :1885年   ⇒    ?
飛行機   プロペラ機     :1903年   ⇒    ジェット機    1947年
テレビ   ブラウン管型    :1938年   ⇒    液晶テレビ   1986年

 


2009.05.18 新型インフルエンザ集団感染と事業継続態勢整備

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年5月17日 19:46
  • 一般 | 経営

  国内でも、先週末に新型インフルエンザの発症が確認され、わずか三日間で100名弱となった。ゴールデンウィークから始まった国際空港での水際検疫の効果が期待されたものの、その後わずか10日足らずで渡航歴のない高校生に集団感染する事態となった。
専門家の間では、成田空港で新型インフルエンザ感染者が発見されてから、いずれ検疫をすり抜けた感染者により国内感染が始まると予測されてきており、ゴールデンウィークで大量に帰国した後2週間程度での集団感染発症というのは想定された期間でもあろう。
 WHOでは早くから水際検疫から発症した場合の感染拡大防止体制と、発症患者の治療に力を入れるよう各国に要請しており、日本でもその体制はこの間で一段と進み、発熱外来の設置、早期診断体制などが充実した。  
 現在、集団発症している患者は生徒、学生が中心であるが、早晩一般社会人へ感染が広がることは必須と思われる。そうなると、昨年秋から始まった世界経済の悪化は最悪期を脱しつつあるとはいえ、アメリカ、ヨーロッパ、日本ともに各種の経済指標は依然として下げている中で、今回の新型インフルエンザ発症であり、国内経済の回復にも少なからず影響を与えるものと思われる。
 既に、公共機関や、大手企業を中心としてBCPに基づき、パンデミックに引き上げられた場合の具体的運用の検討に入りつつあることが報道されている。今後、本格的な集団感染が始まった場合には、公的活動の自粛や、不急不要な活動の自粛、学校を始め大勢が集まる施設の閉鎖等が実施され、多くの事業活動が制約を受けることとなる。
 そのような事態を想定しつつ、どのようにしたら事業へのダメージを最小に出来るのか、大手企業のみならず全ての組織が真剣に事業継続計画を考えてみる必要があると思う。
 危機は、未来にあるのではなくすぐ目の前にあるという覚悟で、対処法を考えることが今求められるのではないだろうか。

2009.5.3  豚インフルエンザと危機管理

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年5月 3日 18:25
  • 一般 | 経営

TS3J0027.jpg 先月末から世界中でメキシコ発の豚インフルエンザ対応が始まった。
今回、メキシコで発生した新型インフルエンザは初動調査に手間取り、死亡者が続出した段階で新型インフルエンザであることが判明した。
 その間に、メキシコを訪問した外国人が帰国後にインフルエンザ感染が判明したり、メキシコ人が海外を訪問することによって訪問先で感染が拡大したりと、欧米を中心に瞬く間にインフルエンザが拡散してしまった。
 4月30日の段階でWHOはパンデミックに達するひとつ手前のフェーズ5を宣言し、インフルエンザの封じ込めに入った。
 近年、東南アジアで発生している毒性の強い鳥インフルエンザが、何時人から人へ感染するタイプに変化するか専門家の間では関心が高く、変異すると過去のスペイン風邪のように世界中で多くの人が亡くなる可能性があることから、パンデミック対応は国を挙げての施策として、行政機関並びに大手企業を中心に危機管理プランが構築されてきた。
 今回、幸いにも毒性が少ないといわれる豚インフルエンザではあるものの、WHOによるフェーズ4引き上げと同時に、政府は即危機管理室を立ち上げ様々な対策が実施した。
 危機管理という面では、数年前に大問題となったSARSウイルス対策危機対応や、今月初めの北朝鮮によるロケット打ち上げに関する危機対応を経て、今回の豚インフルエンザに対する危機管理は第三段階であり、報道等を見る限り、危機管理のシステムが有効に機能しているものと思われる。
 しかし、民間では報道によれば危機管理の仕組みが整っている企業は15%程度といわれており、インフルエンザのみならず日本では巨大地震や、自然災害など何時襲われるとも限らない以上、早急な態勢を整備することが望まれるものである。
 危機管理に関する各種指針を掲載して置くので、是非ご覧頂きたい。
※ 事業継続計画策定ガイドライン<経済産業省2005.2.28>
※ 事業継続ガイドライン第一版<内閣府2005.8.1>
※ 中小企業BCP策定運用指針<経済産業省中小企業庁2008.2.20>
※ 事業継続マネジメントシステム(BS25999)
※ ITサービス継続ガイドライン<経済産業省2008.9.4>
※ 鳥インフルエンザ対策ガイドライン<内閣府 2009.2.17>

2009.4.5 排出権取引と温暖化防止技術事業に関して思うこと

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年4月 5日 19:20
  • 環境 | 経営

TS3J0037.jpg  先週、内閣は地球温暖化問題懇談会案として日本おける温暖化ガス削減計画に関するプランが発表された。基本的には、1990年対比で2020年までに+4%から-25%までの幅で発表された。
日本では、産業分野、家庭分野などによる削減と、森林等によりCO 2を吸収する部分とによって削減が予定されている。
 それでも、不足する分はCDMによる環境投資と、それに見合った排出権を受け取ることによって、日本国内の温暖化ガス削減として認めてもらう制度がある。
 現状のCO2排出状況は、2008年秋からの急速な景気の落ち込みによって産業活動が停滞し、結果として一時的にCO 2排出量が低減するものの、経済状態が回復すれば産業活動によって排出される温暖化ガスはまた元に戻ることとなる。
 このような環境下にあって、今年に入り政府は相次いで、ウクライナ、チェコから排出権合計7000万トンを購入することの契約締結が完了したとの報道があった。排出権取引の価格は昨年のピークからは30%台にまで落ち込んでおり、安い価格で購入できたようである。
 これまでは、途上国で温暖化ガス排出を減らすプロジェクトに投資し、見返りに排出権を得る「クリーン開発メカニズム」(CDM)だけだったが、今回、チェコと合意したのは、具体的な環境対策と関連付けられた排出量取引の仕組みである「グリーン投資スキーム」(GIS)に基づく排出権スキームが新たに加わった形となった。
 しかしながら、東欧、ロシア、中国、アメリカと1990年以降温暖化対策を積極的に進めてこなかった国々から余剰排出権を購入することによって、国内の排出枠を補うことは、経済合理性があるとはいえ、問題の本質とはかけ離れているのではないかと思う。
 世界的な不況のまっただ中で、温暖化防止のための投資までは経営資源を割きづらいといった環境下にあるものの、中期的には経済成長と、地球環境との共生は避けて通れない道である以上、政府も財政出動を伴う景気対策を打つならば、世界に貢献できる環境技術で競争優位にたてるよう政策誘導すべきものと思われる。
 2009.3.15日のブログと重なる部分があるが、日本は世界で競争力のある環境技術は沢山あり、太陽光発電、風力発電、蓄電池、リチウム電池、原子力発電など、温暖化防止のための幅広い技術と、高度な技術を持っている国はほかに類をみない。
 政府には今後の経済回復のキーテクノロジーとして、これらの技術を飛躍的に高度化するための投資と、社会資本としての研究促進を通して、環境ビジネスを世界的に進めるためのリーダーシップを発揮してもらいたいものである。

2009.3.29 もう一つのA-1グランプリ

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年3月29日 21:12
  • 一般 | 経営

TS3J0041.jpg   春にはいり桜の開花宣言がだされたものの、まだ蕾の状態が多く見ごろとはいえない状態が続いているが、春と共に体は外に向かって一気に開放されつつある。その代表がスポーツであり先週終わったWBCは日本中を興奮させてくれた。そのようなスポーツのひとつにモータースポーツがある。A1グランプリという名で開催されている(英語: A1 Grand Prix・A1GP)、モータースポーツにおける国別対抗戦。 「モータースポーツにおけるワールドカップ」という位置づけとして、2005年より開始。他の多くのカテゴリと異なり、秋開幕・春閉幕という形で開催されており、中東や欧米諸国、東南アジア、アフリカ、中華人民共和国、オーストラリアなどで開催されているものが思い浮かぶ。
 しかし、今日のブログではもうひとつのA1グランプリ(英語:Agriculture Grand Prix)についてである。今年の3月3日に農業技術通信社主催によるA-1グランプリが開催されたことを知った。
 日本の農業は、零細性故に一次産業としての保護が一貫して行われてきた結果、WTOや、FTAの自由化交渉における最大の障害となり、交渉妥結できない状況が長年続いている。
 そのような農業環境下にあっても改革の芽吹きは生まれつつあり、アイデアとチャレンジ精神を持って農業を進める人たちが増えてきている。地産地消の促進、安全な農作物の生産、革新的な飼料の生産、農業エコ、農作物の輸出などがグランプリとして取り上げられたようである。
 最近では、福岡産イチゴあまおうが香港、タイ、ロシアなどに輸出され、日本国内よりもかなり高い値段で現地の消費者に受け入れられていたり、米にしても食用用途外としてミニマムアクセスの枠内で限定的に輸入をしている環境下でありながら、一部のブランド米に関しては高くても美味しく、安全ということで台湾、香港、シンガポール、アメリカ等への輸出が一定量ではあるが始まっている。畜産分野では、東京大学名誉教授今村奈良臣さんが提唱し進めている一次産業としての農業、二次産業として食品加工、三次産業としての飲食業これらを一連の事業としてくくり、六次産業として事業化を進め、付加価値をあげていこうとする活動が展開されつつある。
 このような活動が契機となって、保護農政一本やりで来た日本の農業政策から農業者自身が脱皮し、顧客志向、ビジネス志向、経営手法等の改善を通して農業の活性化が進むことによって、政府が進めようとしている今回の世界不況による失業者の受け入れ産業としての農業への転職者も将来に明るさを持てるのではと思うのと、同時に衰退産業から競争維持産業へと躍進してもらいたいと願うものである。
 次回は、このような動きの一つとして、農産物製造プロセス認証制度の一つであるJGAPについて触れてみたいと思っている。

2009.3.15 世界同時不況は新しい産業構造転換の序曲か?

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年3月15日 11:11
  • 一般 | 経営

 TS3J0019.jpgのサムネール画像今回のアメリカ発サブプライム問題は世界経済を極めて短時間で壊滅的に悪化させ、結果として世界中で一心不乱に進めてきた市場主義の悪さのみが目立つ結果となった。
 行き過ぎた規制も確かに自由競争を阻害するものではあるが、行き過ぎた規制緩和による自由奔放なビジネスも問題である。世界の株式総額がこの一年で半減し、幾つかの国で金融機関の国有化に踏み切らざる得ないほど信用が棄損してしまっている。
  しかし、創造を絶する大きな犠牲を生んだにもかかわらず、将来に向かって明るい光も昨年から今年の1年間で生まれてきたと考えられないであろうか。
 一つの代表的な事例をあげれば、地球温暖化対策のための新技術である。昨年原油が140ドルにもなったことから、バイオ燃料の開発が急速に進み、食用のトーモロコシを原料としたものから木材系、雑草類、藻等からバイオエネルギーを作る技術が一気に花開きつつあるようである。さらに藻からバイオ燃料を作るプロジェクトでは、CO2を海中に注入し藻に吸収させつつ、藻の発育を促進させるといった一石二鳥の取り組みも始まっている。
 次に、日本の環境固有技術は世界的にも優れたものがあり、電気自動車用のリチウム電池、水素自動車用の水素タンク、太陽光発電パネル、原子力発電装置、ハイブリッドカー等のハイブリッド技術、省エネ鉄道車両等、従来から得意としてきた微細加工技術が環境との共生の中で役立ち、世界中で競争優位にたてる技術は沢山あり復活のための材料は存在している。
 また、次なる技術世代への仲立ちとしての位置づけかも知れないが、世界の自動車マーケットが崩れているなかで、トヨタやホンダのハイブリッド車は好調な販売を維持しており、同じように他の製品群においても、20世紀型の製品から21世紀型の商品に変化する分岐点となるのではと思えるものである。
 この半年間での経済の落ち込みは、21世紀に入っても20世紀型産業からなかなか転換できない産業構造を根幹から変えざる得ないところに気づかせてくれることとなった、神が与えてくれた試練とチャンスではないかと思う次第である。

(このブログは毎週日曜日に更新予定です)

2009.3.1 中堅・中小企業における雇用の確保とその対応

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2009年3月 1日 18:39
  • 経営

TS3J0010.jpgのサムネール画像のサムネール画像中堅・中小企業においては大企業のようなリストラは殆ど不可能である。
先月の15日のブログに記載したが、今回の金融危機とその後の実態経済の落ち込みは凄まじいものがあり、世界中で需要喚起に向けた財政出動が実施されつつあるものの、市場効果が出るまでに半年、また中堅・中小企業に効果が及ぶまでには、その後1年程度かかるものと見られている。
そうなると中堅・中小企業においては、この間極端に減少した売上あるいは生産量で、従業員を抱えたまま事業が継続できるかとなると、極めて難しいと云わざるを得ない。
近年過去最高の利益を上げてきた自動車や、電機メーカであっても金融危機に端を発した今回の景気後退に対して、大量のリストラを断行し、対処せざる得ないほどの深刻な市場の縮小だからである。
従業員のリストラが難しい中堅・中小企業にとってはリストラせずに生き残り策があるかというと、それがあるのである。
2008年12月に厚生労働省が「中小企業緊急雇用安定助成金」制度を創設し、従業員を休業、教育、出向させた場合には、その手当あるいは給与の5分の4を助成するという制度である。
それに加えて、休業期間中に、当該社員に対して教育訓練を行った場合には、6,000円/一日が補助される。
 しかし、この適用を受けるには労働基準法26条の定めによる休業手当を支払うことが条件であり、従業員に関しては休業当たり最大40%の賃金が減少することになるので、従業員の理解が得られるかどうかがポイントとなる。
助成期間は通算300日で、一年目200日と長く、経営改善期間としては十分な長さと思われる。但し、事業者は労働基準法26条の定めによる休業手当を支払うことが必要であり、休業手当を支払った後に補助金の申請をするという手続きとなることから一定の資金手当てが必要となる。
この助成を受けるには、一定の生産量が減少している、或いは一定の売上が減少している等の要件を満たしていることが条件となるが、現状の深刻な経済不況下にあっては受注が既に大きく落ち込んでいる場合が多く、多くの場合既に条件に該当しているものと判断して良いのでは思う。
 日々、厳しくなる経営環境下にあって、企業の体力を失う前に計画的な雇用調整をこのような制度を積極的に活用し、従業員の雇用確保と経営の維持を共に考えるべきであろう。

 参考URL: http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/koyouiji.pdf

(このブログは毎週日曜日に更新予定です)

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