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2012年1月 Archive

リスクコントロール

  • Posted by: 岩田美知行
  • 2012年1月 6日 17:40
  • 一般 | 経営

今やリスクコントロール手法が様々の業界で導入されている。
例えば、金融業界における金融庁が金融機関を検査する際の基準である「金融検査マニュアル」の統合的リスク管理態勢や、上場会社に求められる内部統制制度の整備・運用の要求等はリスク管理の代表的なものである。
また、世界に目を向けると「ISO31000:リスクマネジメントシステム構築のための指針」が、リスク管理を行う組織のためのガイドラインとして使用されることを意図し発行されている。これらは、何れも個々の課題に対してリスク管理をどのように行うかというものではなく、あくまでも総合的にリスクを認識し、管理していこうとするものである。
しかし筆者が思うに、ISOマネジメントシステムのアドバイザーとして数十年に亘る経験からは、マネジメントシステムでは補いきれないリスクがあると認識せざるを得ない。
今回のオリンパスの損失隠しの偽装取引や、ギリシャ、イタリア等欧州の幾つかの国における返済可能限度を超える国債を発行し続けた結果デフォルトの危機に直面する等は、残念ながらリスクマネジメントシステムをいくら整備したとしても、リスク回避できるものとはならないであろう。最高経営責任者が責任をとらず放漫経営を続ける、あるいはある意図をもって不正行為を行う場合には、マネジメントシステムでは防ぎきれないものと思われる。それが証拠に、オリンパスは事件が表面化すると同時に株価がピーク時比85%近くも急落し、イタリア、ギリシャでは国債の表面金利が7%を超える事態に追い込まれた。
要は、リスク管理システムで救えるのは、日常的あるいは蓋然的に想定できるリスクに対してであり、まさに想定外のリスクについては防御出来るようになっていない。
組織の根幹を構成する人の「業」から引き起こされるリスク部分は、「倫理とか」、「組織文化とか」、「組織は何のためにあるのか」といったような高次元な問題であり、主義や主張に係らず普遍的なものであるのではないかと思われる。
幸いにしてというか不幸にしてというか、日本は巨額な国債発行残と、国家収入に占める税収割合が50%近いレベルを近年推移してきており、これらの解決を先送り出来ない状況に追い込まれている。このことは誰しもが理解していることながら税制改革や、社会保障改革といった個別具体的の対策になるとずっと先送りしてきた。
明らかに、極めて巨大なリスクが眼前に迫っているのに、それを政治家も国民もみないようにしてきた。これはら、リスク管理といった手法の問題ではなく、まさに人としての「倫理」とか、国としての「文化」の問題であろう。
ギリシャやイタリアのように追い込まれる前に、これからの若い人たちが希望を持って生きていけるようになるためにも、巨大なリスクを自ら解消していくことが直ぐにも求められるのであろう。昨年末のEUの混乱をみた今こそ改革のチャンスであり、政治家には不退転の志をもって改革を成し遂げて欲しいものである。
新年にあたっての所感でした。

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