- 2009年3月22日 14:51
2009年1月29日に静岡県浜松市にある富士ハウスが自己破産申請をし、当日の18時に破産手続開始決定が下されたとの報道があった。その後2月22日の某テレビ放送によりその一部が取り上げられた。
その報道の中で感じた企業倫理の問題について触れてみたいと思う。
報道で、被害にあった施主に対する取材情報で衝撃だったのは、営業マンから請負代金を割り引くので1月29日の午前中に全額振り込んでもらいたいとの働きかけにより、契約代金全額を午前中に振り込み、その日の夕方に富士ハウスの自己破産を報道で知った若い施主の話である。
一般的に、建築請負に伴う代金は、契約金、中間金、完成払と3段階に亘って支払われるのが普通であるものの、若い人に取っては高額な買い物であり、思い切って割引をしますと云われると、もともとの契約金額が大きいだけに数パーセントといえども金額にすると大きな額となり、魅力的なものとなる。結果として、一括払したことによりリスクを大きくしてしまった若いカップルの非を責めることは難しい。
問題なのは富士ハウス自身の企業倫理の欠如である。振り込ませた日は、富士ハウスが裁判所に自己破産を申請した日でありその日の午前の段階で社内の人間が知らないはずはなく、そのような経営環境下にあって、施主を欺き施工代金を全額前払いさせた行為である。そのことによって施主側とすれば前払金が一般債権となってしまい、大半が戻らない結果となったことにある。
振り込め詐欺が社会問題となっている中で、人の弱みや、無知に付け込まれて振り込んでしまい被害を受けるといった事件が多発しており、このような事件からみれば今回の富士ハウスによる施工代金の破産当日の振り込み要請は個別案件であり、金額も大きなものではなく社会問題とはいえないという意見もあろうが、これはれっきとしたビジネス上の取引であり、企業倫理の欠如の問題である。ここまで日本企業の倫理感が落ちてしまったことを嘆かざる得ない。
今日、企業は社会的責任としてコンプライアンス順守が求められているが、それ以前の問題として、誠実な企業文化の醸成がまずは求められるのではないだろうか。
幸いにも、倫理法令遵守マネージメント・システム(ECS2000 1.2V)が麗択大学経済研究所により公表されている。今一度、経営者はグローバリゼイション対応をにらみつつも企業倫理に目を向けた真摯な経営を志して欲しいものである。
http:// www.ie.reitaku-u.ac.jp/~davis/assets/applets/j-ecsv2.pdf
(このブログは原則毎週日曜日に更新予定です)
- Newer: 2009.3.29 もう一つのA-1グランプリ
- Older: 2009.3.15 世界同時不況は新しい産業構造転換の序曲か?